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水平線のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

水平線(2023年製作の映画)
3.7
ピエール瀧さん主演で、震災後に海へ散骨する仕事を描いていて、興味深くて劇場鑑賞。初日、舞台挨拶あり。 震災後その後を描いた作品鑑賞は「さよなら ほやマン」(未レビュー)に次いで2作目。どちらも部外者が被災地で波風を立てるところは同じ。

監督のお話ではメッセージ性を抑えたというが、私はメッセージ性を強く感じた。

それぞれの<震災後>を複雑で多様なままに描き、正義でジャッジせず、カタルシスのないエンディングが、<被災者の代弁をしたくない>というメッセージそのものに感じる。足立さん演じるジャーナリストの存在への反意語なんだろう。

日常の慣性を貫くことで、<生きる>土台が確かになっていくことを、存在感と安定感あるピエール瀧さんの演技で明らかにしていく。監督は瀧さんにあてがきしたような作品だと話していた。瀧さんがジャケのように下を向いて粉骨に集中しているシーンがすごくよかった。

気になったところは、怒りを露にするいくつかのシーン。演出にステレオタイプを感じた。全体が静の向きに抑制されているのに、怒りのエネルギーだけが突出し、静と動のバランスが取れない。娘が父に反発し続ける態度もステレオタイプだった。怒りもまた抑えめにすることで、言葉にできないこもった複雑な感情になるのにと思う。

あと、劇伴はいらなかった。潮の音、水産加工工場の音、国道の音、街の音や環境音だけで十分。粉骨の音を引き立てるのがいちばんではないか。

自動車のナンバーが4545なのに気づいて真吾さんだから?とちょっと笑いました。

俳優の小林且弥さんが監督。初監督とは思えない完成度でした。これからが楽しみです。
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