側から見れば多々羅は良い人間とは言えないけど、杏にとっては唯一の信頼できる人間だった。多々羅のおかげで杏は薬物を止めることができ、職につけて、学校に通えた。居場所ができて、少しずつ人生が明るくなってきた。
しかし、多々羅は杏のそばからいなくなり、そして新型コロナは杏の居場所を奪った。
1人の少女がなんとかして現状から抜け出そう、這い上がろうとする姿。安定し始めたはずの彼女の人生が揺れ始め、そして崩れ去る時は一瞬。
救えたはずだった、何度もその機会はあった。
本作は実話を元にしており、その事件の記事は新聞の隅に小さく載っていたのだという。
僕は映画を見てこの事件のことを知ったけど、そうでもなければきっと知ることもなかった。そういう出来事が知らないところで今も起こっている。
それを知った上で僕はこれからの人生をどう生きるのか、生きるべきなのかと思う。
