MasaichiYaguchi

ニューヨーク・オールド・アパートメントのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
マーク・ウィルキンス監督が、オランダの作家アーノン・グランバーグの小説「De heilige Antonio」を原作に長編初メガホンをとった本作は、大都会ニューヨークの片隅で懸命に生きる移民家族に訪れた悲劇と成長を優しい眼差しで描く。
安定した生活を求めて祖国ペルーからアメリカへ渡り、ニューヨークで不法移民として暮らすデュラン一家、母ラファエラはウェイトレスの仕事をしながら2人の息子を1人で育て、息子たちも配達員として家計を支えている。
街から疎外された自分を“透明人間”だと憂う息子たちは、謎めいた美女クリスティンと出会い恋に落ちる。
一方、ラファエラは白人男性からの誘いに乗って飲食店を開業するが、理想と現実のギャップに直面することになる。
本作では、ペルーのオーディションで選ばれた双子のアドリアーノ・デュランとマルチェロ・デュランが、二人の息子たちを演じて映画デビューし、反骨精神を持つラファエラ役には、第82回アカデミー外国語映画賞にノミネートされた「悲しみのミルク」のマガリ・ソリエル、タラ・サラーがミステリアスな美女クリスティン役を務め、サイモン・ケザーが脇を固めている。
アメリカンドリームを夢見る母と、年頃のピュアな息子たち、日陰で生きる“何者でもなかった”彼らが恋をして、大切な何かに気付き、初めて“自分”として生きる意味を見出していく様が、温もりと希望を持って描き出される。