ぐる

無名のぐるのネタバレレビュー・内容・結末

無名(2023年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

トニー・レオン出演、1940年代上海が舞台、スパイたちの攻防戦…と明らかに自分の好みな要素が揃っていながら、こんなにハマらなかったのは自分でもびっくりした。あまり中身のないオシャレ映画という感じ。

まず不必要なまでに時間軸を前後させすぎだし、その意味が分からない。実はこうだったという劇的な効果がほとんどなく、なんとなくエスプリが効いた感じにしたいというような表面的な脚本・演出と感じた。単純な内容の脚本の粗を隠して、難解なスパイものに見せるために時間軸を操作しているのではないかと穿った見方をしてしまう。

ハリウッドにありがちな、なんちゃって日本描写に近いものも多く(不思議な化粧・話し方の芸者や間取りが変な料亭など)、歴史的・文化的背景に関するリサーチも不十分ではないかと思った。一方で中国本土でこの時代の作品を作るには抗日要素を入れなければ難しいだろうというのは理解できるので、途中の無茶な日本軍描写には一定の理解を示したいところ(まあそれでも服装とかが致命的におかしいので無理があるが)。

日本人俳優・日本人役俳優の演技もトニー・レオン、王一博らと比べて明らかに質が低く、台詞が聞き取れないことさえままあった。私は中国語(普通語)が得意なわけではないが、中国人役キャストの方が何言っているか分かるレベルだった。

全般的にトニー・レオンに頼りすぎな作品だったという印象。好きなキャストを見るためと割り切って見る分にはいいが、本格歴史スパイ物として見るには辛いものがある。

時代背景については、満州国建国〜日中開戦〜終戦までの高校教科書レベルの知識があれば十分についていけると思う。汪兆銘政権や援蒋ルートについては特におさえておいた方がよい。
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