べし酒

FEAST -狂宴-のべし酒のレビュー・感想・評価

FEAST -狂宴-(2022年製作の映画)
2.5
事故で一家の大黒柱を失ってしまった被害者遺族を、レストランを経営する加害者家族が使用人として雇い入れると。この粗筋とタイトル「狂宴」からは確実にエクストリームな内容を想像するじゃないですか。もう180度正反対の作品でしたね(笑)
まあなんとなく大まかなテーマは宗教的赦しなのかなと。

雇われた被害者遺族を代表する奥さんは加害者家族に対して、ラストは殆ど感謝といっていい思いを抱いている様に描写されることに衝撃。

恐らくだけど、加害者家族個人個人に触れて家族に対する愛情深さを知り、息子が抱える家族と一緒に過ごせない辛さも知り、自らに重ね合わせて共感したのかなと考えてそこは取り敢えず受容。

映画的葛藤としては実は事故の時に車を運転していた息子が被害者に謝りたいという気持ちをずっと抱えているという所が肝なんだろうけど。
息子が教会に行って懺悔の後に被害者奥さんに自分が犯人ですよと告白してしまうのは加害者側の気持ちとしては心地良く昇華しても、被害者側にとっては今更の告白を受けて「ふざけるな!」という話なのかと思いきや実はここがメインテーマ的であるというね。

そもそも事故を起こした後に被害者を放置して逃亡し弁護士に「自首した方がいいよ」と言われたのに出来れば起訴されたくないとか言って逃げる気満々だし、そのくせ治療代を実名で払い込むとかは作品的整合性もメチャクチャなんだけど…。

諸々飲み込んだとしてのラストの宴。一家の長が服役から戻ってきてめでたさ全開の加害者家族の様子に同調して喜びを見せる被害者遺族は話として受容するけど、共に食すのかと思えばあくまで給仕する側のままなのは流石に疑問符。フィリピンが現在どんな社会なのかよく知らないんだけど、そういった社会的格差に対しての問題意識はないのかなと。
更にかなり宗教に支配されているのかそれともたまたま今作は宗教色が強かったのかなとか。

まあ宗教的には一見良さげな話に見えないこともないとしてその実、社会格差に対する批判要素ゼロが現れているのがタイトルの「狂」という話であるなら笑えるんだけどね。
べし酒

べし酒