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帰ってきた あぶない刑事のmasatのレビュー・感想・評価

帰ってきた あぶない刑事(2024年製作の映画)
3.5
朝一、満場の空間で鑑賞したが、
クライマックスの“あるシーン”で客席から
「アッ!?」
と言う声が漏れた。
こんな体験、久々だ。

そして、怒涛のドンパチが終わり、
「ユージ!」「タカ!」
と呼び合い、タカがグッドジョブ👍ポーズを取った瞬間、不覚にもグッときた・・・

(過去に熱狂した事は一度もない…のに)
なんだろう、この高揚は?

しかし冒頭は、
アレッ?これ予告編?公開記念のインフォマーシャル?さながらの軽さ・・・
んッ!?この演技、本気でやってんの?
と、見紛うばかりの応酬が続く。
74歳と72歳の自然光での皺深い顔も、台詞回しもキツく、それに輪をかけた助演たち(吉瀬と岸谷)も引き摺られている。

こりゃテレビの延長、陰影のない東映画風・・・コリャ酷い、か?
しかし、メインタイトルを超えた頃、その演技と展開に巻き込まれていく自分がいた・・・

早乙女が新たな悪玉を浮き上がらせようとどんなに頑張っても、七瀬と土屋がいくらフレッシュな風を吹かせても、次の瞬間に軽々と吹き飛ばされる。
いくら令和の色が浮き出ても、次の瞬間に昭和の亡霊が蹴散らすのだ。
もうこれは“歌舞伎”である。どれもいつも変わらない同じような味の古芸術だが、アングルを変えると所作一つ取っても、違いと新鮮さが溢れる迫力ある芸術。
70代の年寄りの限界ある演技が、ある瞬間から、“ある型”を守り抜く孤高の二人に見え始め、その“意地”をどこまでも押し通し、押し切られたが最後、一気に乗せられる。清々しい程に。

昭和、は死なない。図太く健在で、さらに太々しい、その“心意気”にまんまとヤラれるのだ。
アクションもそれぞれ期待通りのキレを見せて、まさに伝統芸であり、そのノッてる様に共鳴してしまう。

あの岸谷五朗でさえ、持ち場を守り抜いて、寧ろ爽やかに◯◯のだ。

だからと言って、カビ臭い昭和感満載の懐古趣味映画へと陥らないところが不思議であり、今回の“肝”。まさにこの新参監督の葛藤が、滲み出ていて、これも意地。

ラスト、新たな出発へ向けて、サラリと言う
「ごめんな」
の響きが、様々なことの積み重ねの果ての響きとして忘れられない。

かくして、新旧織り交ぜた“混沌振り”が、カッコよく、心なしか“元気”になる不思議な魅力の映画であった。

オマケは名女優だった浅野温子。コレで良いのだろうか?と思うコワレっぷり・・・これも、意地。
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