となりの

神の道化師、フランチェスコ デジタル・リマスター版のとなりののレビュー・感想・評価

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慎ましい作品だと思った。

アッシジの聖フランシスコを対象にしながら、主に撮られるのは、かれを中心にした共同体の生活で、聖痕の秘蹟を受ける場面などの象徴的な場面は扱われない。
もっとも有名エピソードはハンセン病患者との出会いだろうが、ここも劇的になり過ぎず、フランシスコの静かな表情が印象的である。
そうした雄大な平野での清貧の生活から歌が湧き上がるわけだが、そこには、信仰生活や布教がもつ内面性(回心など)や司牧権力的なイメージはない。

暴君を前にしたジネプロは、フランシスコの教えに忠実に、苦境を耐え忍ぶが、その耐え忍ぶことさえも神からの恵みがなければできないことだと言う。
なにも行動せず、ひたすらに受苦を耐えることに霊性が宿る。徹底して耐えるときにこそ、喜びがある。この反転のロジックは、ルサンチマンにも思えるし、まさしくフロイトが指摘したユーモアの論理であり、見るものには滑稽に映る。
ただ、たしかにかれの口から出る言葉は徹底した自己卑下であるが、その瞳が湛える表情は美しく、信仰に満ち溢れているのかなんとも形容しがたい。
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