『蝶々夫人』でもそうだったが、最近のロイヤルオペラは演目、キャストともMETと丸かぶりすることが多いが、今回の『カルメン』もタイトルロールのアイグル・アクメチーナ(METの日本語表記ではアクメトチナ)だけでなく、ドン・ホセのピョートル・ベチャワまで同じ。
演出と指揮は別人だから、世界的に主役をはれるスター歌手が払底しているということなのだろうか。
どうしてもMET版(2024.3.13レビュー)と比較して観てしまうが、大胆な読み替えや仕掛けが驚きを与えてくれたキャリー・クラックネルの演出に比べて、本公演のダミアーノ・ミキエレットは時代は現代に移しているものの低予算を感じさせる省力型の舞台装置でキャストの演技自体に特筆すべきところはなかった。
正直、大詰幕切れは、完全にアクメチーナとベチャワに任せている感じで、何ら工夫もなく、ホセがカルメンを殺害するに至る経緯が何だか良く分からなかった。
娼婦めいたフラスキータ(サラ・デュフレーヌ)とメルセデス(ガブリエーレ・クプシーテ)は姿や演技がハマっている上に歌唱も良く、演劇大国イギリスらしく合唱団やモブらも一人一人の表情が素晴らしく、その点はさすが。
しかし、演出はアクメチーナの逸材を活かすものでは残念ながらなかった。
アントネッロ・マナコルダの指揮も躍動感に欠け、凡庸だった。
《公式サイト》
tohotowa.co.jp/roh/movie/?n=carmen2023
《参考》MET 2023-2024 カルメン
www.shochiku.co.jp/met/program/5489/