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緋牡丹博徒 お竜参上のTaiRaのレビュー・感想・評価

緋牡丹博徒 お竜参上(1970年製作の映画)
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凄い殺伐としているし残酷で怖い。シリーズ三作しか観てないけど異色な気がする。

加藤泰が監督の三作目に登場した少女のその後を追うお竜さん。賭場で出会った菅原文太と藤純子が身の上話するだけの冒頭場面が、全ショットキマってて最高。構図にカット割、動きの付け方に寄りと引きの組み合わせと、この後も本編ずっと最高を叩き出して来る。会話のテンポや環境音の引き算がちょっと異質。凄く淡々と静かに進んで行く。東京やって来ると賑やかな音に溢れるが、それも一部。芝居小屋を持つヤクザとその権利を横取りしようと企む悪いヤクザの抗争。今回の悪役、安部徹は引くくらい酷いやつ。ヤクザの風上にも置けない、非道極まりない奴。今作の陰惨な空気感を担ってる存在。暴力描写も陰惨だし、女は強姦するし拷問も極悪。ある意味では現実的なヤクザで、対するお竜さんは理想化された任侠を体現してる。ドラマもしっかりしてる。お竜さんが探してた少女が山岸映子だったと分かる場面のフィックス長回しのワンカットは、構図や人物配置、それに芝居の全てがキメキメ。敵対する組同士に身を置く長谷川明男と山岸映子の悲しい末路とかなんて可哀想なんだと。藤純子と菅原文太との場面はどれも良い。雪の降る夜、橋の上で別れの挨拶をする藤純子が蜜柑を渡すと、一個が落ちてコロコロ転がる。雪の上に蜜柑が道を作るあの美しい瞬間。ここの会話もやはり構図カッコいいし、芝居もしっとりしてて素晴らしい。親分の嵐寛寿郎が闇討ちに合う豪雨の場面も凄い。殺す側、殺される側の迫力。子分の汐路章が仕返しに出向こうとするのを藤純子が止める場面も泣ける。切実さが生々しい。様式美の範疇だが妙にリアリズムを感じる芝居。安部徹の非道っぷりが極地に達するクライマックス周辺の勢いも凄い。決戦の直前、橋の上で再会する藤純子と菅原文太。少しの会話を交わした後、両者の目のクロースアップを切り返すだけで「行きましょうか」だもん。無言の中に感情が行き交う凄まじさ。珍しく乱闘の中で髪が乱れる藤純子が美しい。鬼の形相で敵を皆殺しにする菅原文太。終わり方もストップモーションで最高!
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