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マイノリティ・リポートのtomoのネタバレレビュー・内容・結末

マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

SFは斬新なアイディアを描きつついかに論理破綻を感じさせないかが肝になる。本作は手放しに成功とは言い難いというのが正直なところ。
予知された未来の犯罪を元にした逮捕というアイディアは倫理的問題も孕むいい題材だが、未来予知ものではタイムパラドックスの処理というか予知してしまったこと自体がどう今の行動や今後に影響するか?というのが避けて通れないポイントだが、そのあたりの描き方が甘い。一見主人公は意志の力で予知された未来を避けたいい話のようだが、それって予知を知ってたからこそでしょ?感が否めない。それで「予知された犯罪以外の道を選ぶこともある」となってシステム自体の廃止にすんなり進むのは納得いかない(より直接的な廃止の原因がマイノリティリポートの存在による予知の不確かさや黒幕のスキャンダルが明らかになったことだとしても)。例えば予知を覆す役どころを主人公でなく何も知らない元奥さんにしてたら(予知を見て必死で止めようとした主人公がギリギリ間に合わなかったのに奥さんは自身の意志で思い止まった!的な)もっと納得感があった。
こんな大事なシステムの根幹がたった3人の個人に委ねられてるのも怖すぎる。3人死んだら終わりのシステムって存続性の観点で駄目でしょ。せめてもっと超厳重に保護しなさいよ。ふらっとやってきた監査官が触れる距離まで入れるとかありえん。例えその人が反対派の刺客じゃなくても風邪でもうつしたらどうする。現に主人公に誘拐されてるじゃん。殺人予定現場まで連れてって、怪我でもしないかハラハラした。
黒幕のトリックもリスク高すぎ。3人がどんなビジョンを見るかには干渉できないんでしょ?たまたまフードを被る前の自分の顔が映ってるところから予知が始まったら一巻の終わりじゃん。
アガサの能力に描き方も一貫性が感じられず、傘や風船のような緻密なロケーションを踏まえた予知や、通りすがりの一般女性の不倫が夫にバレる未来を一瞬で見る描写で凄さを表現したかったのかもしれないが、逆に今回の主人公の事件に対しては、ストーリー的にピンチを強調したいからだろうが、見えることが限定的で助言が少なすぎギリギリすぎて矛盾している。見えるビジョンの鮮明さや読み取りの可否には限界やブレがあるといった制約を課していた方が良かっただろう。
未来都市の描き方については、スマートホーム的な機能はもう実現しちゃったので凄く見えないのと、データをいちいち板みたいなメディアでやり取りしてるのがクラウドが当然の現代では滑稽に見えるのが難点だが、実はもう20年前(!)の映画ということでこれは責められない。後に答え合わせをされちゃうのもSFの宿命。
酷評のようになってしまったが、そこそこ面白かったからこそツッコミどころが目についてしまっただけで、娯楽作品としてはまあまあ。しかし、タイムパラドックスをストーリーに見事に織り込み昇華したTENETは本当に凄かったんだなと何故かクリストファーノーランに対する尊敬が高まる結果になった。あれ見るの体力使うんだけど、もう一回見ようかな。
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