ポンタ

毒娘のポンタのレビュー・感想・評価

毒娘(2024年製作の映画)
5.0
“ちーちゃん”が顕にしていく、ある家族の闇
上映開始直後から、ボロボロの赤い服に、裁ち鋏を振り回し、大暴れする“ちーちゃん”
神出鬼没、なのに侵入の様子は丁寧に見せてくれる“ちーちゃん”アンバランスな不可思議さと、凄まじい暴力が“ちーちゃん”と云う存在の強さ、そしてその意味を知りたくなる

本編中、ずっと憑き纏う不快感、嫌悪感、女、母の萩乃、娘の萌花、女と云う立場を押し付け、意思を削ぎ、奪う、モラハラな夫(父)の篤紘、これは、ジェンダーの役割の縛り付けからの開放の物語
クライマックスまで溜まりに溜まって汚泥のようにグロテスクなまでの吐き気を催す嫌悪感を、一気に昇華させていく様が、本当に気持ち良く、最高に悲しいのに、救われるホームパラサイトホラー
伊礼姫奈演じる“ちーちゃん”のどこか哀愁漂う、けれど、内面の劇場や、幼さ、人を心の“蓋”に対して、その蓋ごと打ち壊す、どこかの優しさ

“ちーちゃん”の接することで、徐々に抑えられた疵跡から、じわじわと血が滲み出し、溢れていく血のように、そして、痂を取った時に、思いの外流れ出す血液のようにいつかは決壊する
その赤い赤い奔流の中から、立ち上がる萩乃と萌花の、破壊と再生、赤く、紅く、朱く、緋い、猛毒は同時に、薬にもなり得る
そして、あらたなるホラーアイコン、“ちーちゃん”の誕生でもある

そして、きっと、この映画を観た後は、
コーラとケーキ、買っていきたくなるはず
ポンタ

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