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毒娘のnetfilmsのレビュー・感想・評価

毒娘(2024年製作の映画)
3.4
 何やら最近『変な家』という映画が流行っているらしく、あっちに期待値MAXで行った人の何割かを根こそぎ釣り上げたいという欲求はよもやないとは思うのだが、今週のやっちまった案件がこちら。いやぁ酷い。想像を絶する酷さに絶句してしまった。だがこちらも正しく『変な家』であり、変な間取りの映画だからその意味ではAIでも『変な家』の近似値に結び付ける映画だと思うが、とにかく脚本が何から何まで酷いのだ。家庭環境に恵まれない幸の薄い萩乃(佐津川愛美)が主人公で、ようやくIT起業家の夫・篤紘(竹財輝之助)と出会い、結婚するのだが彼には元妻との間に10代の義理の娘・萌花(植原星空)がいるのだ。いかにもバブル崩壊期の90年代初頭の白塗りで庭が少々ある中古の一軒家に引っ越す辺りは完全に昭和が抜け切れずなのだが、引きこもりの娘の萌花の歳がこちらが思っている以上に大きくて、父親が竹財輝之助では無理があると思う。ようやく普通の幸せを手に入れたはずなのに、2人目が欲しいと言われ妊活アプリを嬉々として開く篤紘が実は一番のホラー案件で、今作の恐怖の絶頂は開始10分でものの見事に終わってしまう。

 旦那がいつも着ているおそらく「Happy」と「application」の造語であろう「Happli」のTシャツをこれ見よがしに着させる製作陣のうすら寒い演出から察せられるように、とにかく何もかもが上滑りし続ける。何なんすかあの「ちーちゃん」という名の女性は?ホラー映画の貞子のように不気味にショッキングに登場したかと思えば、ケーキ3つとコーラを注文する辺りも何やら微妙に滑り倒しているように思うが、次の登場の瞬間から普通にこの家に暮らし始めた時点でホラー映画にする意味がどこにあったのか?夫・篤紘はとにかく警察に通報して欲しくなく、妻に仕事をさせず専業主婦として隷属的に中古家に閉じ込めようとする(一応窓などはリフォームされているが)。前妻との離婚理由に夕食がいつも冷凍食品ばかりだったと記述する辺りも本当に地獄で、今さら昭和的世界観で堂々と物語を紡がんとする。登校拒否のくだりと妻が実は衣装デザイナーとして優秀でありながら、近所のダンス好きの子供の為に新しい衣装をデザインする辺りに今流行りのシスターフッド的な連帯は見えるのだが、それなら奇を衒う様なホラー的な演出は避けた方が良かったはずだ。人間の業を見せるならば幽霊やサイコパスの見た目よりも普通の見た目にした方が効果は大きく、あえてホラー的な演出にミスリードした製作陣の判断そのものが悪手でしかない。ご近所に住む奥さん役で久しぶりに馬渕英里何を観たのがせめてもの収穫だった。
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