六四二

ゴースト・トロピックの六四二のレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
4.0
バスドゥボスの映画は漢方薬のようで、いろいろ主張しないのが好きならば気に入るかもしれない。
ベルギーのアラブ系年配女性にフォーカスする。あまり目に止まることのない存在、作家のモチーフ選びの一つの型かもしれない。
清掃員の仕事をしているハディージャはある日、仕事帰りの終電で眠り込んでしまい自宅から離れた終着駅で途方に暮れる。その行動を観察するのが本作の内容だ。
人影がまばらな街をハディージャが彷徨う。夜のアクアリウムを見るような感じで時間が過ぎていく。
その途中ですれ違う知らない人。彼女は何人かの知らない人に一方的な気がかりを寄せる。なぜ?
そして冒頭とお終いにハディージャが住む部屋がじっくりと映し出される。アケルマンの映画のように。その部屋を見ることで、彼女の矜持が感じ取れる。
街を心細げに彷徨う彼女から想像もつかないそのような人間像を浮かび上がらせて目を向けさせるのが作家の意図ではないだろうか。
六四二

六四二