あっという間に夜の帷に導かれる一期一会なロードムービー。
わりかし評価高めで予告編やポスターから気になっていた本作を見に行ってみた。
まずオープニング、何気ないアパートの一室みたいな内装を固定ショットで見つめるファーストルック。するとカメラ固定のままゆっくりと陽が落ち夜になっていくのを日差しと陰で表現する、まさにエリセ"エルスール"のオープニングみたいな美しい始まりに魅せられた。
まあ本作はそんな始まりからとある清掃業者で働くおばちゃんにフォーカス、深夜まで働いたおばちゃんが真っ暗な街で帰宅のため地下鉄に乗ると寝落ちしてしまい終点に着いちゃったという話だ。そこからなんとか家に帰ろうとするんだが、お金もあまり無いしゆっくり歩いて帰るしかないというゆったり家路ロードムービーがスタートしていく。
そんなミッドナイトロードムービーはさながらプロット的にはヴェンダース"まわり道"そっくり、主人公が意図せず旅していく過程の一期一会な物語らないスタイルやっぱいいよね。誰か助けてくれませんかと入った店内の店員と会話したり、逆にたまたま道端で寝込んでたホームレスを助けたりと出会いと別れ、人の冷たさと優しさが交互に成り代わっていく旅路をただ眺めていくのみ。
だがそんなゆったり旅の中でたまたまおばちゃんの娘が出てくるシークエンスで、唐突におばちゃんの内面が映像で語られる感じが"PERFECT DAYS"っぽくて涙が溢れそうになってしまう。過去に何があったかはわからないがいろいろと人間ドラマが染み出す素晴らしいシークエンスに痺れるばかりだ。
あと映像的には基本固定カメラでたまに長回しという感じなんかが同じくベルギー出身監督シャンタルアケルマンを想起させるというか、しかしそんな固定ショットばかりの中唐突にカメラが動き街を浮遊しそうなカッティングなんかは小津の"麦秋"を思い出す気持ちよさ。めちゃくちゃ構図を意識したというよりかはあくまでも自然の中にある構図をうまく撮る感じなんかは"春原さんのうた"の杉田協士監督っぽくもあり、だが全体的な雰囲気としてはケリーライカートっぽいゆったりチルアウト系であるしめちゃくちゃいろんな映画作家を感じさせるバスドゥヴォス監督すげぇってシンプルに感じた素晴らしき映画体験。ラストには実は仕掛けがあったりして最後にハッとした部分もあり、だがあくまでも映像に没入させる映画館鑑賞必須かもと思わせる作品で最高でしたなぁ。
