Gau

クロッシングのGauのレビュー・感想・評価

クロッシング(2008年製作の映画)
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2020年鑑賞No.103
こんなにドストレート(直截的)で見せられる現実から逃がれられないものを観る経験はあまりない。これは今からそう遠くない北朝鮮の脱北者の話の一つ。監督のキムテギュンは直截的な現実を直載に描くことに専念したという。
私はこの少年ジュニや家族たちには同情する余地もなく"ただただ"悲しむことしか他にない。
2004年頃からだろうか。日本での北朝鮮の話題というとこの国は異常であるとメディアが報道されるようになったのは。私は決してこのストーリーの当時の政権である金正日を擁護するわけではない。しかし、我々が見落としてしまいがちなのは、北の窮伏と日本は少なからず関係があったということだ。当時日本は北に対して送金停止、資産凍結、輸出入規制、船舶の入港禁止など様々な経済制裁を行っていたのは事実である。我々の歴史を遡れば、炭鉱で働くヨンスやサンチョス一家の悲劇については無関係ではないはずだ。一体この作品を触れたどれだけの人がこれに気付いているのだろうか。
 そして、国の政治活動の振舞いと国のひとり一人の国民は同一ではないということは分かるはずだ。例えばの話だが、韓国政府は日本政府に対してあんなんだが、そこにいる韓国人と話してみれば分かる。
 さらには、この物語の彼らがどれほど悲惨な状況に置かれていようが、その人々が自分たちと何も変わらない人間であることを知るべきだ。
そりゃあ怖いよ。でも僕らで何か北に対してできることはないだろうか。もっと知るべきなんだ。もっと突き詰めて考えるべきネバーエンディングテーマだ。
最後に。最近『パラサイト』でも雨は重要な役割を果たしていたが、この作品でも同様であった。ただ違うのは、こんな悲しく嬉しい雨の表現は果たして自分は観たことがあるだろうかと問いたくなるほどだった。少年の砂漠での最期の回想で登場する雨、ラストのお父さんに振る雨は物凄く心を打たれた。つい先日人間の條件で仲代達矢の絶望顔を見たばっかだったのに、こんな幼い少年の絶望している表情を見るとは。。。DVD表紙も印象的。
Gau

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