みむさん

The Sex Thief(英題)のみむさんのレビュー・感想・評価

The Sex Thief(英題)(1998年製作の映画)
3.8
クリスティアン・ペッツォルト長編(TV映画)3本目。意外と暴力描写あり。
社会からドロップアウトし生きる術を模索する姉妹二人の姿を通してドイツ統一後の資本主義の負の側面やゆがみを見せつけるようなクライムドラマ。

姉ペトラは海外で盗みを働いては妹の学費と将来のために送金、裏家業も潮時になりドイツに戻ると妹は貧困に陥っていた…という。

タイトルが原題英題ともに「セックス泥棒」なんだけど別にセックスで稼ぐわけではなく、男性を誘惑して金を盗んで逃げる手口。
ここまでしなきゃならない理由は二人の言葉の端々から想像ができる。
夢を追い続けてもお金にはならず、資格やスキルがあっても、就職するにしろ娼婦として客をつけるにしろ、結局は相手が欲しいがる物をアピールするしかなく。
彼女たちは結局生活のために自分たちを男性に売り込む娼婦のスキルを磨いていくしかなかったということなんだろうな。

妹は姉が海外の仕事で成功していると信じ、姉は妹が仕送りで夢に向かって頑張っていると信じ…。

お互いが現実を直視することになったのはよかったが、それで事態は全く好転しないし。
お金がなければどん詰まり。生きるために彼女たちがこの時点でできることがこれしかない、というか、低賃金でずっとギリギリで生きていくか娼婦になるか。
女性に限らず、不景気にのまれたり資本主義に乗れなかった者たちの悲しきドラマだった。