ChameleonBaby

もっと遠くへ行こう。のChameleonBabyのレビュー・感想・評価

もっと遠くへ行こう。(2023年製作の映画)
4.0
"I'm Thinking Of Ending Things"もう終わりにしようの原作者イアン・リードの映像化作品なだけあって楽しみにしていた。
これのためにPrime再加入。

気候変動、世界飢餓が襲う2065年地球の片田舎に2人で住む夫婦。
そこに夜中いきなり政府を名乗る男がやってきて、宇宙移住計画の特別プログラムに選ばれたと告げる。
しかし行けるのは夫だけ。その代わり夫にそっくりな人工生命体を置いておくよ、という話。

"aftersun"のポール・メスカルと"レディ・バード"のシアーシャ・ローナンのW主演。私にとってハンバーグオムライス。
シアーシャ・ローナン大好きなので嬉しい。彼女のキレのある喋り方と表情の豊かさはとてもツボ。特に目線の移ろいと行動の俊敏さ。
片田舎で大人しく夫に従順に生きるキャラなわけがない。笑

ジュニアと一緒に心の準備をしてたのに、まさかのもう既に?!という叙述トリックはイアン・リードの得意技なので知ってた。知ってたけど思ってたポイントと違った!
相変わらず人の愛情を踏みにじること、弄ぶことは得意で、こっちの心づもりを平気でズラしてくる。
いや、替わりのジュニアも出発する体にしてあげなよ...なんでわざわざ絶望させるんだ...とか思った。

過去を振り返ると、自分が望んでいた道とは違っていたことを痛感させられる。あの時望んでいた夢が、気持ちが蘇る。
自分のコピーを作るために自分のことを深く話すほど、今の自分が別人でいようとしたことに気付く。
お互いが交わらないまま描かれる悲劇、この冷たさが、観客にどういう感情になればよいかわからなくする。
熱と失意の対比。面白かった。

「非凡な自分でありたいという凡庸な願いが、替えの利かない地獄を生む」