ChameleonBaby

哀れなるものたちのChameleonBabyのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
事前情報なしでヨルゴス作品ということだけで観に行ったので、設定からサイコスリラーものかと思ってたけど割と堅実社会派な映画でびっくりした。

身投げした妊婦の遺体を回収して、胎児の脳を母親の脳に移植し蘇生させたバクスター。
彼は知的好奇心の赴くまに実験体としてベラを生み出したにも関わらず、娘のような愛情を抱いてしまい、彼女と世界との関わりを断絶し、遂には手元に押し止めるために助手のマックスとの婚約を図る。

一方でベラは外の世界に対しての興味が留まることなく溢れ出し、自分で見つけた性的快感のその先を見せてくれるダンカンの甘い言葉に乗り、外の世界を見に行く駆け落ちの旅が始まる。

ロンドン→リスボン→船旅→アレクサンドリア→パリの旅路を経て、彼女は世界の混沌と絶望を目の当たりにしながら、歪な生まれに対する属性的な基準をものともせず、自己アイデンティティを成長、確立させていく。



生まれが歪なのにも関わらず、剥き出しの好奇心で世界を切り開いていく主人公ベラのキャラクターが魅力的すぎる。
特に、慣習に囚われた人々の間に最初から割って存在する子ども、その中で気づき、成長していく過程は本当にすごい脚本。
性への目覚め、自立した性、家父長制への反発への流れはフェミニズム史を思わせる。

序盤の乳幼児の世界に対する無理解と知的好奇心を象徴するようなを音楽効果が良い。
外見は大人なのに精神年齢が子どもだからこそ映る現実のグロテスク。

随所の衣装のクオリティ、チョイスが逸脱。
特に幼少期の不釣り合いな部屋着とドレスの混在、格差社会を痛感した際のフォーマルドレス、医学への道を決めた後の私服など。

ハリーは原作者本人の思想なんじゃないか?と思うぐらい本作品のを核心を呟く。
「あなたのことが理解できた」とベラが話したシーン、あの瞬間に世界のベクトルが変わって良かった。

性描写がとにかく多いのは結構キツい。
この世界観には必要な描写だったけど、性癖としか言えないぐらいしつこく出てくる。

それにしても前作といい、エマ・ストーンの演技が凄すぎて呆気に取られる。