尿道流れ者

けんかえれじいの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

けんかえれじい(1966年製作の映画)
3.8
下宿先の娘に恋心をよせる真性、いや神聖童貞のキロク君。なんやかんやで漢を磨くためにスッポン師匠に弟子入りし、早速奥儀を伝授されるなどハイスピードで漢を磨いていく。中学生のキロク君は校内の秘密組織岡山セカンドミドルスクール団に入るが、なんやかんやで揉めていき喧嘩三昧の日々。かたや恋の方では一歩も進むことができず、燃えたぎる性欲を喧嘩で解消しようとするも堪えきれないキロク君は下宿先の娘の大切なピアノをイチモツで弾き倒すというジャジーな変態プレイに精を出す。
そんな型破りな日々も長くは続かず、キロク君は会津若松へと追いやられてしまう。

鈴木清順らしいあっけらかんとした明るさとぎこちない演出が、キロク君の実直で不器用な人間性ととてもマッチしている。カトリック教徒でありながらも、全うしきれない姿はひどく可愛らしい。
意外なほど爽やかに進むが、清順らしさもきっちりでていて、夜桜が舞うシーンや俳句カフェでの異様なムードなんかはツィゴイネルワイゼンのよう。下宿先の娘との純愛も綺麗で切なく、どのシーンも心にジーンとくる。

喧嘩をするなかで漢を磨いたキロク君はどんどん反骨精神を身に付け、神に対しても疑問を持つようになる。そして、ニ・ニ六事件でお上に対して反抗していく北一輝に感化され上京する。片田舎の暴れん坊精神が大きな流れへと変化していく感じもとても良かった。