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名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 いやはや今年で何年目かという春の風物詩にすっかり定着した感のある『劇場版 名探偵コナン』シリーズだが今回は特に豪華な内容だった。とりあえず黒ずくめの組織や烏丸蓮耶とのシリアスな攻防は一旦脇へ置いて頂きたい。今作は北海道・函館を舞台に、新選組の土方歳三が五稜郭に残した謎のお宝を巡り、秘宝強奪ゲームが繰り広げられるという物語上の骨子になっている。今作の目玉は何と言っても怪盗キッドが第23作『紺青の拳』以来4作ぶりの登場となり、服部平次が第21作『から紅の恋歌』以来6作ぶりに登場し、Wキャストとして江戸川コナンと三つ巴の闘いを繰り広げることだろう。物語は二層構造となっており、函館における弁護士殺害事件の推理が縦軸にはあるのだが今回は幾分大人しい。そしてもう一層こそがコナンと2代目怪盗キッドと平次ののっぴきならないやりとりに大部分の時間を割いている。案の定、今回はストレートに毛利蘭よりも遠山和葉をフィーチャーしており、そういう意味では主人公であるコナンも今作限りは服部平次に主役の座を譲った印象すらある。

 とはいえ、いつメンみんなもバランス良く配置し、灰原哀や毛利小五郎、少年探偵団、それにレアキャラの沖田や鬼丸や中森青子にすら見せ場を用意するから、観ていてかなりビックリする。今回は事件のあらましも相当に複雑で、そこに国際的な闇の武器商人やある財閥が絡むことから、無駄に情報量も多いのだがおそらく観客の好みはコナンと2代目怪盗キッドと平次の方に向いていると考え、縦軸と横軸とが複雑に絡み合うのである程度のテンポ感もある。その中でも平次の恋のライバルとなる剣士のひじりこと福城聖がイケメン美青年で平次に無駄にプレッシャーを与えることになる。服部平次と言えば付き物のあのキャラクターが今回も強烈な役回りとして出て来るし、ある意味服部平次による服部平次のための『名探偵コナン』で活劇も凄い。特にセスナ機の上での剣道対決はなかなかにバカで必見である。個人的には服部平次を演ずる堀川りょうさんの声が高校生に聞こえなくて、つくづく大変だと思った。これを踏まえ、新一とキッドの関係は発展しても面白いしまた反転させても面白い。今回は未来の展開よりも、今いる面子で再解釈の趣もあり、極めて番外編的だがこれもまたコナンである。
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