Rick

侍タイムスリッパーのRickのレビュー・感想・評価

侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)
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傑作。

時代劇を創り上げるクリエイター陣の熱い想い、時代のうねりの中で命を落としていった人々の意思を現代に受け継ごうとする奮闘する侍たち。両者がシンクロし、過ぎ去った時代の数々、それらを描く映画界では下火になってしまった時代劇という『過去』に再び光を当てようとする今作の軸に酷く感銘を受けた。

未来にタイムスリップしてしまった侍が慣れない現代で奮闘するドタバタコメディのような形で終始するのかと思いきや良い意味で予想を大きく裏切られる。

タイムスリップしてしまった一介の侍が時代劇の切られ役となるという設定。それを通して描かれる今となっては時代遅れとなってしまった時代劇を未来に遺していこうとするクリエイター陣、仲間たちが生きた激動の時代を現代に遺したいという想いを抱く侍の主人公。両者の想いが共鳴し重なり合いながらストーリーが進行する。そして、時代劇の高みでぶつかり合う140年前に生きた2人の武士を描いたあのラスト…。

現代はそれぞれの時代を懸命に生きた人々が持っていた想いの集積。それは映画界も同様。今作は『過去』に光を当てて、大きすぎるほどのリスペクトを持って描かれていて終始涙が止まらなかった。

間違いなく私のオールタイムベスト。
また観たい。
Rick

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