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ラストマイルのエスのレビュー・感想・評価

ラストマイル(2024年製作の映画)
5.0
あまりにも貧困。みんなボロボロになりながら資本主義の歯車になっている。他に選択肢はないに等しく、そうでもしないと生きていけず。みんな疲れきっている。その現実をスクリーンを通して突き付けられているのが物凄く辛かった。悲しかった。どうにかしなきゃと思った。

小さい頃は大人になるにつれて世の中がめちゃくちゃ楽しく、良くなっていくと思っていたが、最近は段々と目の前に広がる惨状に、この現実に耐え難い日々が続いている。どうしてこうも暗く、苦しく、誰が光を奪っているのか。

何気なく傍にある便利さの裏側、圧倒的に理不尽な仕組みを突き付けられ、弱音を少しでも吐けば排除される。選択権を放棄する、すなわち、それぞれが責任を持ち自分の考えで意思決定をすることが出来ないほど、みんな余裕がなくて、人情の欠片もなくて、みんながみんなを非人間化してる。そんな世界誰も望んでいない。大義とは。正しい力の使い方とは。

鑑賞後、雷に撃たれたような衝撃と共に、がらくたを聴きながら泣くのを止められなかった。今作に込められた願いは切実で途方もないが希望に満ち溢れている。野木さんと塚原さんコンビが手がける作品の社会問題の取り上げ方が心の底から大好きで、これからもずっと自分たちの目を覚まし続けていて欲しいと思う。見過ごしちゃいけない。腐ってちゃいけない。心に血を通わせていなきゃいけない。Twitterやパンフを読みながら迎える朝日は眩しかったです。そして少しでも今作でみた奇跡が広がり、素敵な世の中に向かうことを願っている。
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