CHICORITA主任

トラペジウムのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

トラペジウム(2024年製作の映画)
4.0
乃木坂46の元メンバー高山一実による小説を原作としたアニメーション映画。
アイドルを目指し、東西南北の各学校から一人ずつメンバーを集めてデビューを目指す女子高生の姿を描く。

なんか変だけどすごく面白かったです。
アイドルもアイドルもののアニメや映画にもあまり興味ないんですが、「なんか変」という前評判がやけに目についたので興味本位で鑑賞、実際かなり変で期待通りでした。

主人公・東ゆうの自分本位で周りの気持ちを顧みない言動が取り沙汰されますが、もちろんそこも変なんだけど、アイドルが原作を書いてアイドルを目指す少女たちがモチーフになりつつ、あまりアイドル活動をメインに描いておらず、かつやや否定的に描いている点が個人的に変な映画だなーと感じたポイントでした。

本作上映前にも、2〜3本のアイドルものアニメ映画の予告編が流れていて、アイドルアニメ飽和状態の昨今、普通に作っても面白くない、ということだったのかもしれません。
しかし、当のアイドル本人が「アンチアイドル」な作品を出し、それが乃木坂46のクレジットも入った状態でアニメ映画化されるというのは、なかなかに面白い現象だと思いました。
日本のアイドル文化も歴史が古いし、私が思うよりずっと多様で懐の深い世界なんでしょうね。なんというか、目から鱗でした。

私見ですが、「アイドル活動に限らず何かに本気で向き合い取り組むことの大変さ、辛さ」や「そこから生まれる一生ものの人間関係、友情」が本作のテーマなのではないでしょうか。
そういう意味では、単なるアイドル映画を超えた普遍的なテーマ性を獲得した作品といえるかもしれません。

ストーリー・テーマ面を除くと、アイドルとしての活動を描くパートは短くあっさり目で、ライブシーンは一回きり。
作画レベルは安定しているものの、特に目を引くほど動くところもなく、劇場アニメとしては並といった感じ。
劇中アイドルグループ「東西南北(仮)」の歌う劇中曲のクオリティはかなりのもので、ここはアイドル映画としての面目躍如といったところ。

アイドル残酷物語からの、そこから生まれた本物の友情を描いた、ちょっと変なアイドルアニメ映画です。
珍品気味ではあるけれど、鑑賞の価値は十分あると思うので、ぜひぜひ劇場でご覧ください。
CHICORITA主任

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