きつね

トラペジウムのきつねのネタバレレビュー・内容・結末

トラペジウム(2024年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

2024(158)
【破滅からの再生】
めっちゃ好き。
なんかすごい自分に刺さった。
主人公がアイドル作品としては珍しく性格がめっちゃ悪くて、「アイドルになる」という目標のためには仲間を傷つけてしまうことも厭わない自己中心的人物なので人によっては嫌悪感を抱くかもしれない。
だが、俺はこの主人公・東ゆうという人物の心情がすごく理解できる。
「アイドルになる」という目標はキラキラしているけど実際になれるのはほんの一握り。
たとえアイドルになったとしても生き残っていくのは容易なことではない。
だからこそどんな手を使ってでもその夢を叶えようとする。
とても聖人君主ではやっていけない。
そんなことをゆうは理解していたからこそのあの姿だったのだろう。
俺も目指すものはゆうと近いので痛いほどよく分かる。
もっともただ単に俺が性格が悪いから彼女と共鳴したのかもしれないが。

作品自体の話をすると、まずは曲がめっちゃいい。
オープニングからまず引き込まれるし、エンディングもエモい。
そしてこの作品を手がけたのはCloverWorksというだけあって作画がエゲツない。
作品内で写真が特に強調されていたのだが、風景が時折実写かと見間違えてしまうほど美しかった。

正直アイドルになるまでの展開が都合良すぎだが、そこからだんだんみんなの関係性が壊れていくのがリアルだった。
「彼氏いるなんて信じられない。友達になるんじゃなかったわー。」
「歌苦手だって分かってるなら練習しろよ。」
「明日も収録なんだからグズってるんじゃねーよ。」
だんだんみんなの顔から笑顔が消えていって、ついには発狂する者や泣き出す者も出てくる。
そして順風満帆だった東西南北も解散することに。
最初はあんなに仲良かったのに。
お仕事も歌やロケが楽しかったのに。
失敗をして腐るだけ腐ってからまた新たな道をリスタートする。
転んでもその傷は、積み上げてきたものは美しい。
なんだろう、彼女たちの友情が青春が眩しい。
ゆうがアイドルに固執する理由やアイドルの苦痛の描写、そして東西南北解散後に友情が修復される理由付けが薄いのだけが残念だけど本当に好きな作品。
きつね

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