もりあゆむ

シビル・ウォー アメリカ最後の日のもりあゆむのレビュー・感想・評価

3.5
戦争の狂気。

これは単に現代のアメリカをメタファーにしているだけではなく、世界中の分断、諍い、争いに共通した、人間の営みの狂気を描写した映画だと思う。
とは言え、United States of AmericaがもしもUnitedでは無くなったらどうなるのか、というわかりやすい提示。
Americaという国は何をもってしてUnitedなのか、を考える提起。
何が原因でこうなったのかは説明されていないが、民族や宗教が絡んだものとは想像し難い。にも関わらずここまでも分断されてしまう市民たち。
いざこうなってしまうと、誰と何故戦っているのかわからないままに、行き着くところまで行かないと、誰にも止められない狂気の暴走。
また、それを止めようともせず、知らんぷりを決め込む人たち。

4人のジャーナリストの描き方も、メッセージ性が強いと思った。
戦争報道も、足を踏み入れると抜け出せない世界なのか。
この狂った状況で、誰に何を伝えようとしているのか。
決定的な現場を押さえて歴史に自分の名を残したいだけ?
最後は完全に狂ってましたね。

映像は美しく、音響は効果的で、この狂気をしっかりと受け止めるためには、映画館で見るべき作品です。
狂った世界にふさわしい明るめやサイケデリックな音楽も、内容によく合ってたと思う。

売れっ子街道を歩き始めたケイリー・スピーニーは、この映画への出演とキルスティン・ダンストとの縁がきっかけで「プリシラ」の主演に選ばれたそうで、さらに「エイリアン:ロムロス」で飛躍。確かに存在感ありました。今後の活躍が注目です。
ちなみに、この映画でおそらく観た誰もが一番怖かった兵士を演じたジェシー・プレモンスは、キルスティンの旦那だそうです。
いやー、狂ってましたね。。。

監督さんについては、「エクス・マキナ」は大好きな作品。
今作、テーマ的には、現代版「地獄の黙示録」か、はたまた「フルメタルジャケット」か。スコアは控えめですが、なかなかの見応えで悪くなかったです。
これからも注目したい。
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