フィクションとして完璧で、同時に痛いほどリアリスティックだった。
見ながらフルメタルジャケットを思い出して重ねていた。
どちらもリアルな描写の中に過剰なフィクションを重ね、けれどその過剰ともいえる描写は実はこの世界のリアルなのかもしれない(あるいは現実はもっと残酷かもしれない)と思わせるような狂気を孕んだ映画だ。
フルメタルジャケットは70年代の大義なき戦争で消費されたアメリカの若者たちを描く社会風刺の映画だ。今作はまさしくその現代版といえるんじゃないか。
残酷な世界では感情を押し殺して生きていくしかない。あるいは役割に徹し、あるいは酒やドラッグに頼る。
けれど人間は感情なしには生きていけない。感情を抑えることができなかったとき、暴力の前に人は無力だ。
観終わった後に都会の街に出て、これまでずっと過ごしていた普通の世界に違和感を抱くようになる。この感覚はジョーカー1をみたあとに似ていた。