けんくり

スリー・キングスのけんくりのレビュー・感想・評価

スリー・キングス(1999年製作の映画)
4.5
湾岸戦争を舞台にした寓話を通して、戦争が残したものを炙り出す傑作。

フセイン軍との停戦協定が交わされたイラクにて、クウェートからフセイン軍に強奪された金塊探しを発端として、様々な事件が巻き起こる。とびきり不謹慎なユーモアに溢れていて、時に豪快なアクションがあり、戦場の描写は極めてヘヴィーでリアリスティック。

これイラク戦争末期で、てっきりフセインを打倒した後の話だと勘違いしていたから、例えば「反乱軍」が何に当たるのかとか、しばらく混乱していた。よくよく見たら1999年の映画で、この後911があってイラク戦争にアメリカが突入することを考えると、凄いタイミングで公開された映画なんだと思う。

富を独占しようとしていた主人公たちが、最終的にはアメリカ軍に見捨てられた反乱軍を助け、本当に"Three Kings"になっていく展開が皮肉。結局外発的な動機がないと人道的なことはできないのか、それともジョージ・クルーニーの最後の行動のように、他者を思いやる気持ちが欲望を上回ることができるのか。

コメディっぽく始まって、超シリアスに幕を閉じるデヴィッド・O・ラッセル監督の手腕が流石すぎる。決して説教臭くならず、気の利いた大オチも見事。もっと日本でも観られるべき映画。