床ずれ

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争の床ずれのレビュー・感想・評価

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ちょうど昨日、駒場で田中純先生の最終講義を聞いたばかりだったので、田中先生がアビ・ヴァールブルクや磯崎新、ベンヤミン、デヴィッド・ボウイから読み解いた「方法」と、ゴダールのそれとがダブって見えてしまった。
「il est difficile de trouver un chat noir dans une chambre obscure, surtout s’il n’est pas là.(暗い部屋で黒猫を探すのは難しい。それが不在であればなおさら)」という言葉は、田中先生の言う「無(ナッシング)」からイメージを創造すること、歴史を構築することの方法論と難しさとに通底するように思われる。
ゴダールこそは、何も見えない、何も聴こえない、不在のスクリーンの地平から、新しいイメージと音を結晶させることの実験家であった。彼は冥府の底から今もなお、我々のもとに新しいイメージと音を到来させてくれる。
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