パウロ・ローシャもそうだが、この時代のポルトガル映画の画面の艶かしさは異常に美しい。いつまでも見続けてしまう。
聴覚的快楽を極限まで高める代わりに、視覚的面白さ、楽しさ、喜びをことごとく削ぎ落とす。正直、ストローブ&ユイレは禁欲的すぎて近寄りがたい。そこまでして視覚的快楽を封殺しなければならない理由がよくわから>>続きを読む
アニエス・ヴァルダの息子がむちゃイケメンだった。ジェーン・バーキンも中性的な顔立ちで、25歳の歳の差(!)を覆すほどお似合いな美しい2人だった。
これも、ちゃんと見るのは初めてシリーズ。
黒人が差し伸べた握手を、白人主人公が腕組みで返すという、えげつなく露骨な人種差別が何の悪びれもなく描かれていて、すごいものを見た。
しかし、KKKの制服はなん>>続きを読む
言わずと知れた映画史の傑作だが、ちゃんと見たのは初めて。
グリフィスお得意の「最後の救出劇」の息詰まるサスペンスは見事。走る汽車と車が、疾走する古代の馬車へと並行モンタージュされるところとかたまらん。>>続きを読む
フランス人は自分のオピニオンをはっきりと持って主張するとよく聞くが、この映画を見ると確かにそうなんだろうなと思う。決して簡単に自分の主張を相手に合わせたりすり寄せたりしない。他人との意見の衝突を恐れな>>続きを読む
『アタラント号』といい、この時代のフランスのヤバい奴は、部屋に色々ごちゃごちゃしたものを置いているというのがあるあるの共通認識だったのだろうか。
パリからよう分からん要件でド田舎の故郷に連れ戻され、突>>続きを読む
戦後日本の恥部、暗部をこれでもかと描く。パパ活のパパの愛撫の気持ち悪さに比べ、近代文明以前の土着的な村に暮らす実父が死の際で娘の乳房を咥えるショットは、本来であれば生理的嫌悪感を抱くはずなのに、不思議>>続きを読む
ブレッソンの中で1番好きな映画。なかなか見られる機会がなかったので、数年ぶりに見られてよかった。
セーヌ川を船がぬーっと横切るだけで、なんでこんなにも映画的になるんだ!
濱口竜介『ハッピーアワー』の裁判のシーンは、完全にこの作品へのオマージュだと思った。
終始俯いているジャンヌが裁判官の方を見る瞬間瞬間の目が神がかり的に美しい。
白人の大好きなニッポンと、日本人の白人コンプレックスが絶妙にマッチした時代の映画。今じゃこんな無邪気な映画は撮れないだろう。
劇中歌のマイブラと、チョイ役の藤井隆が良かった。
今となってはありふれた表現だろうけど、やはりスローモーションで棚から本が崩れ落ちたり、甲冑が倒れたり、カーテンが風で揺れたりする映像は不気味で美しい。
高速道路でゲリラ撮影中、警官に「緊急時以外はここに止まるな」と言われて、「今が緊急時だ」と答えるゴダール。
ローザンヌの街の表面を縦横斜めに舐め回すように撮影して、そこに何が映っているか、あくまでも形>>続きを読む
実際のデモで警官と武力衝突する現実の映像とフィクションが交差する前半パートはすごく良かったのだが、後半、謎のカーチェイスが始まったあたりからついていけなくなった。
なんでこんなチープなアクションを着地>>続きを読む
前半は面白かったのだが、後半は胸糞悪いしつまらないしで、これだったらバカリズムの方が上手い脚本作れるだろうなとか思いながら見てた。
前半は、ミシェル・ピコリの何やってるかわからない近所のおじさん感がと>>続きを読む
久々に見直したけど、やはり神がかっていた。
鈴木清順の『夢二』のテーマソングを使うセンスが素晴らしい。大人になると、脳内で『夢二』のテーマを流して、目に映る景色に「ムード」を与えないとやっていられない>>続きを読む
Evil Does Not Exist。邪惡根本不存在。
タイトルですでに勝っていて、それだけでなんか悔しくて今まで見ていなかったのだが、濱口作品の中で1番好きだった。
メロドラマ的想像力(ピーター・>>続きを読む
たしかに、大学にこんな中年男ばかりいたら、次の年にスチューデント・パワーが蜂起する理由もわかる。
足の悪い夫人が、アピチャッポン映画のジェンおばさんに見えた。テニスコート、おもちゃみたいなボートのある池、飛行機の滑走路のような、開かれた空間もアピチャッポンが好みそう。
密室ではなく、開かれた空間の>>続きを読む
脚本のジャック・プレヴェールによるセリフを噛み締めながら見た。プレヴェールの詩がいつも優しいように、ジャン・ギャバンのセリフにも同じ温かみがあった。
『時計仕掛けのオレンジ』も『ジョーカー』も、この手の男はみんな一人っ子。
この世のすべての一人っ子に幸あれ。
中島貞夫の『脱獄広島殺人囚』や『暴動島根刑務所』の方が面白かった。「松方弘樹東映脱獄三部作」みたいに、もう1作つくってくれることを期待。
バービーランドというより、ずっとツイッターランドを見せられている気分になってしんどかった。人間の現実社会は、そんな単純な二項対立で出来ていないことを、バービー&ケンや、Xで不毛な議論をしている人々は学>>続きを読む
21世紀の人類がつくり得た最高のハリウッド映画の一つだと、10年経ってもそう思った。
この映画のおかげで、ド文系の私でも、相対性理論や量子力学、ブラックホールの仕組みや特異点、事象の地平面についてめち>>続きを読む
パリの映画館で今年のカンヌのグランプリを見た。ムンバイに暮らす医療従事者の2人の女性の物語。タイトルになるだけあって、やはり光の具合がとても良い。特に洞窟のシーン。海辺のバカンスの瑞々しさもとても良か>>続きを読む
フィンランド経由のフィンエアーの中で見た。日本語字幕はなかったけど、カウリスマキなら全く問題ない。ウクライナとロシアの戦争は日本よりもあまりに身近なのだろう。飛行機も、ロシアの上は飛ばず北極圏の上を通>>続きを読む
メソメソジメジメ系木下恵介は退屈で苦手なのだが、本作は歌舞伎風の様式美が異化効果になって、感情移入しきらずにすんで面白く見られた。
田中絹代が歯を抜くシーンが圧巻。
撮影助手に成島東一郎の名があるのも>>続きを読む
「情緒が足に突き刺さった」──!
しかし、この映画で1番「情緒」的なのは、肝心の簪そのものの視覚的イメージが一切出てこないところだろう。
笠智衆は、目に見えない無に突き刺さった。そして、田中絹代は、み>>続きを読む
なんなん?これ?と頭の中でハテナが連発しながら見ていた。
若松プロが低予算で作ったロードムービー並みにチープ。和製ボニーとクライド風な犯罪逃避行ものなのだが、よくもまあ、敗戦直後の占領下で、検閲も厳し>>続きを読む
初ダグラス・サーク
とにかく演出の力が凄かった。シンプルな話をこんなに奥行きのある豊かなメロドラマに仕立て上げることができるのは、ひとえに演出の成せる技なのだろうなと。3回登場する鏡の使い方もあざとい>>続きを読む
駄作との評判を聞いていたので、期待値低めで見ていたからか、割と楽しめた。
ただ、私の中でスタンダールのジュリアン・ソレルは、もっと弱々しい泣き虫坊やで、今の言葉で言うところの「無敵の人」感のあるヤバい>>続きを読む
流石に面白い。
西部の砂漠に聳え立つ木造の教会の塔を見て、『オッペンハイマー』でのトリニティ実験の塔を不可避的に想起する。
ヘンリー・フォンダとドクとの初めての出会いのショット・切り返しショットの「1>>続きを読む