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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版のUniのレビュー・感想・評価

3.5
冒頭の酒場シーンは酔っ払いが全く酔っ払いに見えなくて、演劇性や演出されていることの意図を感じさせたいのかと思うが、その佇まいが完全にコントロールされた人々のものに見えてしまってあまり好きになれなかった。

ハンガリーはじめ東欧の国々は現代においても政治的にとても不安定。共産主義の支配、民主化、国内での政治的混乱、経済的混乱など遠くから見ると人々は翻弄されているように見える。
鯨は夜静かに運び込まれ、広場の真ん中で隠されている。鯨といってももう命の輝きはない、何も見ていない瞳、大きな抜け殻。混乱の始まりはこんなふうに静かに、でも無視できない存在感で、黒く押し黙っているのだろうか。
ヴェルクマイスター音律は作品中で、自然で神のものだった完璧な音階に手を入れたものとして批判的に語られる。鯨の剥製は変質してしまった自然そのもので、調和の取れていた人々の生活を壊す。

エステルと2人で歩く横顔、暴動に向かう人の群れの長回しが好きだった。ずっと観ていられるし、観ているうちに映像が風景になる感覚が味わえる。
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