苦手意識の強いタル・ベーラであるが、これは良い意味で21世紀とは思えなかった。
ただ距離ごとに見た目を変えるだまし絵みたいなクジラ≒見世物から、傀儡政権の裏側まで見せる主題そのものにあまり興味を持てず。典型的なスローシネマかと。
相変わらず長回しに強度が無いのはキツいし、それは即ちオフスクリーンとフレーム内を往来するような「動」がない(長回しを仕事的に使う)=無作為なワンカットは緊張感を欠いたまま映画が弛緩していくので結局カットが割れないだけになってしまう。
啓蒙的な言い方をすれば運動が欠落しているのだが、しかし中盤以降は謎めいた広場で暴動が起こり、ヘリコプターが画面を横切っていく活劇的な見せ場があるのでそこは高得点。まぁ本編と尺が見合わないくらいクソ短いんだけど…。
屋内の演劇的な動線もワンカットが重荷になってるとしか思えないが、ひたすら歩くしかない移動を正面から捉えた反復構図はキャメラが逆方向へ押し込まれていくような圧迫感がある(良いとは言ってない)。