ハンガリーの田舎町で郵便配達員をしているヤーノシュ
街の酒場で老人たちを相手に天文学を語るというか体現させる場面がユニークで冒頭から惹きつけられる
年老いた音楽家のエステルの身の回りの世話をするヤーノシュ
ある日、街の広場にサーカスがやってくる
正体がよく分からないがサーカスが連れてきた"プリンス"と名乗る煽動者の声
世の中を正すリーダーになって!何時までに!はやく!
焚き付ける者たち(エステルの妻ら)は人を動かし惑わすが自分では一切動かない
ヤーノシュが広場に行ってみると群衆はいるものの殺気だったり群れているわけではない
そこにただいる集まっているだけである
見世物小屋の中のクジラの剥製に魅了されてしまうヤーノシュ
しかし次第に鬱憤や弱いもの抵抗できないものへの怒りが増幅していく
街の中で炎があがり爆発も起こりはじめる
大人の真似をする子どもたち
暴力の連鎖も生まれる
群衆は群れをなして町中を歩き回り
いためつけたり壊していく
そして自分たちより弱いもののいる病院へ向いていく
この暴動シーンは特に忘れられない
暴行を受けている人の声は聞こえないが
物が壊れる音が響いているのが恐ろしい
街の変わりようを眼にするヤーノシュ
近しいものの死
どこまで行っても追いかけてくるヘリコプター
精神をきたし言葉を失う
始まりは何てないことだが不安が大きくなるにつれて鬱憤や怒りを生み出し強い破壊行動に繋がっていく社会の縮図
あれほど世を狂わしていたサーカスのクジラが遺物のように広場にむき出しなになっておりその目を見つめるエステルのカットで映画は閉じられる
主人公の目を通して世の中を見る
ラルス・ルドルフのまんまるい目が象徴的
全編モノクロ映像でカット割も少なめ
なかなか1度では飲み込めないような面が多々あった
もう一度見てみたいがやはり映画館のスクリーンで見たいなと思う作品
★2024年映画館で鑑賞
22本目
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