いろどり

カンダハールのいろどりのレビュー・感想・評価

カンダハール(2001年製作の映画)
4.0
イスラム教の洗脳教育、女性迫害、地雷による手足の欠損など、静かで叙情的な映像のなかのリアリズムが突き刺さる。

異境の地のエキゾチックな光景は非常に興味深く美しさを感じる。

砂漠を歩く女性たちの姿はとても美しかった。

実体験を基にしているという出演者たちの目が力強く、特に主演女優からは並々ならぬ強い意思を感じた。

空から降る義足を我先にと松葉杖の男性たちが群がる異様な光景。女性は全身を布で覆い隠す。医師の診断のときでさえ小さな穴越しというイスラム原理主義タリバンの迫害の様子を批判的ではなく俯瞰的に撮っている。


モフセン・マフマルバフ監督はイスラム主義としてイラン最後の王朝討伐のレジスタンスとして活動していた。隣国アフガニスタンのタリバンも、軍閥に抗議し、イスラムを基盤に国を良くしたいという同じ思想だったはず(wikipedia参照)。権力を持つと人は狂いやすくなる。それが集団であると力はさらに強大になる。

太陽が覆いつくされる日食で始まり、日食で終わる。
迫害は終わらない。
「いつか世界の人が助けてくれる」という2001年のセリフが悲しく響いた。

一度沈静化したタリバン。
火種があれば追い風を逃さず燃え上がる。
歴史は繰り返すとよく言うけど、2021年にタリバンが政権を掌握したあとに見ると胸が締め付けられそうになる。

今作や「ブレッドウィナー」のような圧政下を描いた悲しい映画がまた生まれるのかもしれない。
こんなに美しい文化を持った国なのに、本当に悲しい。

世界が救うべき国はウクライナだけではない。
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