たむ

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスターのたむのレビュー・感想・評価

4.2
30年前のジェーン・カンピオン監督の金字塔が4Kデジタルリマスター版で公開です。
昔にVHSで観て以来、初のスクリーンでの鑑賞でしたが、当時は何もわかってなかったと反省です。
本作を語るときにやたらと出てくるのが、女性初、というものです。
この30年で大きく変わったのはその考え方で、その変わるきっかけとしての本作も、あるわけです。
6歳で話すことを止める、という異常な設定は、成長することを止める『ブリキの太鼓』を思い出させます。
ピアノを使ったコミュニケーション、話さないからこその伝え方、伝わり方、触れる、触れないの微妙なニュアンスが、表現されます。
映画的な三角関係から不倫の葛藤、女性の欲望が描かれる一方で、男性の潔癖が描かれる。
そこに娘である子どもの視点が入り、物語は複雑な葛藤に向かっていきます。
原題が『The Piano』、邦題よりものに関するニュアンスが強い印象です。
人とピアノ、男と女、大人と子供。
対立して葛藤していくドラマで、観る側の成長によって広く観られる印象です。

それにしても本作の製作された1993年はとてつもない年です…。
カンヌ国際映画祭パルムドールを本作と『さらばわが愛覇王別姫』が同時受賞。
世界では『ジュラシック・パーク』が大ヒット、しかも主演がサム・ニールさん。
オスカーは『シンドラーのリスト』。
『フィラデルフィア』『逃亡者』『ショート・カッツ』もこの年…。
キェシロフスキ監督もアン・リー監督も3大映画祭を賑わす…。
凄い年もあるものですね。
たむ

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