ラッキーマウンテン

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスターのラッキーマウンテンのレビュー・感想・評価

3.8
公開当時がどんな世相だったのか知らないけど、原題と邦題でだいぶ意味が変わる作品だと思った。これは監督的に問題ないのだろうか。
The Pianoだけならエイダ一人の自我が主題だとわかるけど、邦題のピアノ・レッスンとなると教える側・教わる側の最低二人が主語にならない?
観終わって一番に感じた違和感がそこだった。1994年だとまだ日本は女性の社会進出とかいう単語が出てない時代なのか?男女の性愛に重きを置かないとエンタメは受け入れられなかった時代なの?
この4Kの予告編では「抑圧された女性のアイデンティティ」的な側面が出されているように感じたし、実際にクライマックスの流れを見てそれが主題だと思ったんだけど、ピアノ・レッスンという邦題のせいでエイダの自我がぶれているように感じてしまったのが残念だった。
4Kリマスターで過去の名作を楽しめるのはいいことだけど、当時の価値観に適ってつけられたであろう邦題が作品理解を阻害する稀有な例だと気付かされた。

あまり作品に関係ない話で始めてしまったけど、個人的には「よくそれだけの代償で上手く収まったね」という感想で一杯になった。
生活してて「なんでこの人結婚できたんだ?」と思うことがあるけど、ヒトとしての出来の良し悪しじゃなくて波長の合う個体と巡り会えただけなんだよな、という感情を思い出した。別にエイダが駄目とかではなく、波長が大事という話です。
というかあの旦那、我慢強い上に器用すぎない?普通勢い余ってやりすぎてしまうだろうに、そんな数センチだけ狙えるって……先進国に帰って別の商売始めたほうがいいのでは。
あと犬の使い方が上手い。直喩と隠喩を同時に表しててあそこが一番痺れた。
聖誕祭?の劇もだけど、振り返ればレトリックだとわかることを物語に組み込むのが巧みすぎる。
エイダのあのメッセージはいろんな捉え方ができそうだけども。

イメフォでピーター・グリーナウェイ特集を完走してきたばかりなので「これピーター・グリーナウェイで没になった曲をリサイクルしたの?」と思う場面があった。ファゴット?ミュート入れた金管?の音が特徴的なせいだろうか。
でも主題の曲は本当に素晴らしいと思う。

絶対違うとはわかってるけど旦那がウルヴァリンに見えて仕方なかった。おわり