椎蕈

ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉の椎蕈のネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

ジャングルポケットが本命不在の最強から本物の最強になるまでを描いた物語。
これまでと比べてもウマ娘の「走りたい」「勝ちたい」っていう本能を特に強く描いた印象だった。
フジキセキで三冠を取る夢を叶えられなかった「チームフジキセキ」がジャングルポケットを育てるという史実を、ウマ娘ではフジキセキの走りに憧れてジャングルポケットが走る事を決めたのが良かったし、日本ダービーがタナベトレーナーとフジキセキ2人の夢で、ジャングルポケットがそれを背負う構図なのも最高だった。
トレーナーがフジキセキに「お前の分まで、ポッケが走るよ」って言うところも史実を思うと泣ける。

ファンサービスもすんごい良かった。
マートレが出てきたりとか、尊死してるデジタルとか、ずっと食ってるヒシミラクルとか、ふわふわのことを語ってるアヤベとか、桐生院とか樫本理子みたいな、アニメ未登場のゲームオリジナルキャラ達が出てたのも良かった。
その他にも沢山のウマ娘が映り込んでて、ファンには堪らない作品になってたと思う。

日本ダービーが良過ぎた。
ジャングルポケットの野生味がある専用BGM付きで、ラストスパートに入った瞬間めちゃくちゃ鳥肌が立った。
ダンツフレームとジャングルポケットの競り合いと「私だって勝ちたい!勝ちたい!」「そうだよなぁダンツ!来い!」ってところが熱過ぎて何回見ても鳥肌が立つ。
皐月賞もちょっと不気味で不穏なBGMと共にぶっちぎるアグネスタキオンがかっこよかったし、ゴールした瞬間の全てを察して寂しそうな顔をしてたのも良い演出だった。
皐月賞が終わった後に倒れるみたいな展開をを想像してたけど、同期の前では強がって、みんなが部屋を出た後に靴を上手く履けてない描写がある事で左脚の故障を表してて逆にグッときた。
その後部屋がどんどん汚くなるのも、目的を失って虚無になっていくタキオンを表してるんだろうなって思った。

ラストレースのジャパンカップもタキオンが走るきっかけになったのは物凄く良かったし、バトルアニメみたいな演出もかっこよかったけど、もう少しオペラオーの掘り下げをして欲しかったって感じかなぁ。
世紀末覇王としてのオペラオーをもっと見たかった。
ジャパンカップ後にオペラオーとジャングルポケットの絡みがあるだけでもだいぶ違ったと思う。
RTTTに続き出番が少なめだったのが残念だった。
ただ、有馬記念をオグリキャップが見守ってる描写があったのはめちゃくちゃ嬉しかったし、ラストスパートの再現度も最高でオペラオー自体も物凄くかっこよかった。

史実のレースを再現した構成になってるからしっかり楽しめるし、結果を知ってるからこそキャラクターの絡みもすんなり入ってくる。
ウマ娘とジャングルポケットが好きなら日本ダービーを見るためだけに映画館に足を運ぶのも良いってレベル。
勝利の叫びをこれでもかってくらい再現してて良かった。
ダービーのBGMもドチャクソかっこいい。

最初に観た時は「ジャングルポケットを曇らせ過ぎて微妙」と感じてたけど、見返したらちゃんと積み重ねと描写ありきで説得力があったし、負けてもタキオンというライバルがいるから闘志を捨てなかったのに、タキオンが無期限出場停止をすることによって目標を失い、勝ち逃げされた喪失感に覆われて「もしタキオンが現役だったらポッケは最強じゃないかも」と「もしフジキセキがクラシックレースに出ていれば」を重ねる所が良かった。

越えるべき壁がタキオンでもオペラオーでもなく、勝利を諦めている自分自身という魅せ方をするのもスポ根してて良かったし、憧れの存在だったフジキセキにそれを教えてもらうのも粋で良い。
新時代の扉をこじ開けたジャングルポケットを見て、故障で第一線から身を引いて客観視してたタキオンがまた走る決意をする描写も良かった。
ウマ娘の限界にしか興味がなくて、レースの勝敗に興味がないタキオンが「ライバル達と走りたい」っていう成長をするのも良い。
ジャングルポケットの走る目標だったタキオンを再起させるという、テイオーとマックイーンの関係性も彷彿とさせる展開だった。
史実再現も勿論そうだけど、ウマ娘は故障した実馬をIFでまた走らせることが出来るのが良いところだと思う。

ギャグにしろシリアスにしろ顔芸が多かったり、静かなシーンが多かったり、今までのウマ娘と比べると異色だったけど、スポ根ものとしての熱さはしっかり健在だった。
最初はそんなに好きじゃなかったけど、何回も観てから良さに気付いたしめちゃくちゃ好きになった。
ジャングルポケットも成長してるけど、1番成長してるのが史実では皐月賞で引退したタキオンなのが良い。
今回のチームでシンデレラグレイも作って欲しい。
椎蕈

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