映画大好きそーやさん

ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉の映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

4.3
文句なしの、ウマ娘シリーズ史上最高傑作!
本作は、『BLUE GIANT』に匹敵する衝撃を受けた傑作アニメーションでした。
ウマ娘シリーズを観たことがある方は勿論のこと、これまで1度もシリーズを観たことがない方でも楽しめますので、ぜひ1ミリでも興味があるのなら今すぐ劇場に走ることをオススメします。
と言うのも、本作は劇場という環境で観るのに最も適した作品となっておりまして、サブスクで観ようものならその迫力や臨場感、没入感を損なってしまうこと請け合いだからです。騙されたと思って、なるたけ良い上映環境が整った映画館の席を予約しましょう!
内容としては至ってシンプルで、主人公であるジャングルポケットがライバルたちとレースで争っていく中で、「最強」のウマ娘を目指すという、王道スポ根ものと表するに相応しい物語となっています。
これだけだとよくある話で片付けられてしまいそうなので、もう少し踏み込んで書いていきます。
褒め出せば切りがないほどに素晴らしいクオリティのアニメーション作品なのですが、代表的な良かった点を挙げていきますと、個性豊かなキャラクターたちによって織り成される等身大かつ、パワフルなドラマに何度も泣かされ、史実を知っていればより楽しめるような仕掛けもてんこ盛りで、知らずとも呼吸をすることを忘れてしまうような、作劇にマッチした劇伴とSE、そしてTRIGGERやWIT STUDIOを彷彿させるような力の入った作画によって魅せられるレースシーンの気迫等々にとにかく圧倒させられます。
真っ直ぐで情熱的なジャングルポケット、彼女に「最強」の道を示したフジキセキ、レース狂いたちに翻弄されながらも、己が信じた蹄跡を刻むダンツフレーム、「最速」に狂気的な執着を見せるアグネスタキオン、その後を追う影の実力者マンハッタンカフェ、全ウマ娘の壁として立ちはだかる覇王テイエムオペラオー。
どのキャラクターも立ちに立った個性をもっており、観客は自分の推しキャラを作ったが最後、そのキャラの行く末を手に汗握って鑑賞することになります。
重低音と荒いタッチの作画によって表現されるレース中の圧迫感、息苦しさはそのままダイレクトに観客にも伝わってきて、一緒になってもがくことになるでしょう。
ここで1つぶっちゃけた話をしますと、私も観ている最中、あまりに集中して固唾を飲んで見守っていたせいか、鑑賞中(特にレース中)は酸欠状態のように呼吸が浅くなり、鑑賞後は座席でぐったりしてしまいました。このレベルでのめり込んだのは、冒頭にも書きました通り『BLUE GIANT』を観た時以来でした。(『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』に関しても同様に興奮しましたが、あちらはすべてのコンテンツに目を通した状態での鑑賞であったため、除外しています)
史実に関しては、私もそれほど知っている訳ではなく、軽くそれぞれの馬の戦績や戦った馬の名前を頭に入れた程度で鑑賞に臨みました。
そんな付け焼き刃的な知識量でも十分感動させられてしまうドラマを見ることができますので、余裕がある方、隙間時間が見込めそうな方がいれば、調べてから観るのも良い鑑賞体験になると思います。
この劇場版の公開に辿り着くまで、TVアニメ3シリーズ、Webアニメと、何度もアニメーション作品として作られてきました。
新しい作品が作られる度にドラマ面、作画面、演出面ともに進化しており、今回の劇場版はその集大成、極地に到達していると感じました。
どの要素も蔑ろにされることなく、バランスよく混ざり合うこの奇跡には、感動するより他にありません。
映像媒体、それもアニメーションであることを活かした音響効果、重低音の破壊力、敢えて崩したような作画を用い、カメラも俯瞰、ロングは当然として、POVや足元の寄り等々、増えに増えた手数、武器で勝負してくる気持ちよさ、画になるアニメーションの数々を浴び続けることができ、ただレースシーンを観るだけでも鑑賞料金の元は取れたと感じられると思います。
ただ個人的に気になる点も幾つかあって、例えば日常パートにおいて、キャラクターがスライム状になったり、極端に動きを付けてギャグ漫画調の作画になったりと、遊び的なアニメーションが挟まれていくのですが、全体として緩急になっていたように感じる部分はあれど、どうにもトンマナが合っていないようにも感じました。
また、キャラクターの描写配分として、少々足りていないように感じるキャラクターもいて、ジャングルポケット、アグネスタキオンが主軸に描かれるのは分かるにせよ、もう少し脇を固めるキャラクターの動向、ドラマも強固に描いてくれていたらと、残念に思う気持ちもありました。
あと、日本ダービーという大きなレースの後は間延びしている印象もあって、最後が良かっただけに尺の使い方によってはより感動度数の高いものに仕上がったようにも思えました。
気になった点としてはこの程度で、概ね大満足の作品でしたね。
総じて、ウマ娘シリーズの最高到達点であり、多くの方に観てもらいたいアニメーション作品の傑作でした!
※4DXも鑑賞予定ですので、感想をまた書きに来ます。よろしくお願いします!