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スーパーの女のタクマのレビュー・感想・評価

スーパーの女(1996年製作の映画)
4.0
安売りを目玉にしたライバル店の出現により窮地に立たされる老舗スーパー。打開策が思い浮かばず流れを変えれない苦しい状況の中でお客様目線の改革を提唱する井上花子をレジ係に雇用する。
社会派とエンタメの両立を描いてきた伊丹十三監督が市民の日常の場であるスーパーを題材に描いたこれまでの作風の中では一番シンプルで分かりやすい娯楽作品。正直これを見るまでは自分が普段毎日の様に通ってるスーパーの裏側ってあんまり想像した事とかなかったなあ。
男勝りでスーパーを知り尽くした専業主婦の花子だからこそ見える語れるお客様視点の商売の流儀。商品片手に語られる良い店になるポイントに観客として聞いてるこちらも目から鱗。そういう単にスーパーっていう職場の中だけやなくてパートのおばちゃん達や堅物で扱いにくい職人の男達に対する花子の人は真っ正面からぶつかりあって考えれば幾らでも成長できるし変わる事ができるっていう向き合い方は職種関係なく良い仕事をする為には大切な事ですしわかっててもなかなか出来ない分見ていて見習わなきゃなあって思ったもんです。現に自分も仕事仲間でこいつどうしようもないなあって思ったら心の中では突き放してしまいがちですからね。
本作はそんなお仕事ハウツーとして物語が進んで行きますがそれだけでは終わらないのが伊丹十三監督作品。潰れかかった店の救いの女神になった花子の登場で盛り返しを見せる老舗を潰そうとするライバル店の策略が後半になるにつれヒートアップ。遂にはまさかのカーチェイスまで飛び出すぶっ飛び展開に。幾度の危機を乗り越え全員で結束し自分達の店を守る決意を固める花子達の姿は「ミンボーの女」のラストに重なって見えた。伊丹十三監督の作品はなんだかんだで癖強な作品も多いですがこれは過剰なエロは出ないし叔父さんとおばさんのお仕事ラブコメとして気楽に見れるシンプルさを考えたら伊丹監督作品の入門編としてもオススメです。
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