・ジャンル
オカルトホラー/サスペンス
・あらすじ
旧知の枢機卿、ローレンスに呼び寄せられ遥々ローマの孤児院へ奉仕活動にやって来たアメリカ人の修道女、マーガレット
親しみを持って迎えられた彼女だったがそこには不穏な空気が流れていた
異常な子とみなされ隔離される少女カルリータの存在、分娩室で目にする異常な光景…
幼い頃、自身も“幻”を見て度々騒ぎを起こしては罰を与えられていたマーガレットは似た境遇にあるカルリータに自分を重ね守る様に接するのだがある日、破門された神父のブレナンに彼女の誕生に隠された闇と教会に渦巻く陰謀について語られ…
・感想
悪魔の子、ダミアンのもたらす災いを描いた超有名シリーズ「オーメン」1作目の前日譚を描いた今年の話題作
今作ではダミアンが産まれるまでの背景が描かれている
過去作は宗教色が強く荘厳で壮大且つ邪悪な世界観を重視していたもののキリスト教思想を絶対視し過ぎていた事もあり少々自分には合わなかった
対して1作目の前日譚である今作は宗教色は保ちつつも現実のキリスト教への風刺も感じさせつつ現代に合った女性の置かれる弱者としての立場を描いた秀逸でより邪悪な作品となっていた
題材が題材だけに表現規制との戦いという面で製作陣は苦労したそうだが多少の妥協はありつつも十分にそれは味わえる
教会に潜む一派の闇深い陰謀は権威を取り戻す為の蛮行というだけでなく獣姦というキリスト教上での禁忌も犯しており、誤解を恐れず言えば”失敗作“と言える出生と共に死んだ子供達の形態異常もシャム双生児や水頭症などかなり生々しい
終盤で明らかになるマーガレットの血筋を踏まえると最終的な狙いは近親相姦にも当たるし禁忌に禁忌を重ねる様がとにかく容赦無くて良かった
またキリスト教の権威が失われる元凶として世俗主義に触れられているが今作の時代が‘71年という事でヒッピー文化やフォークの隆盛にも重なり非常に説得力がある
その上で現実離れした物から生々しい物まで可能な限り過激な表現が成されていて、1作目へのオマージュであろうシスター自殺のシーンなども印象的
リメイク版とは違って今改めて製作した意義が多分に感じられる名作と言えると思う
サスペンスとしての展開も分かりやすい伏線を序盤で示しつつしっかりと回収し、その過程も1作目の様な冗長な物になっていなかったのが素晴らしかった
自分は日本人なのでキリスト教にはそこまで明るくない
それでもキリスト教を保守思想として受け止めれば理解のしやすい内容で無理のないフェミニズム表現という面でも良く出来た内容
個人的な要望としては出来ればいつかモザイク無しのディレクターズカットが観られたら嬉しいなぁ、と
何はともあれキャスト陣もオーラに溢れていたし特に主人公マーガレットを演じたネル・タイガー・フリーの憔悴と反逆への変化は迫力があった
ラストのシスターフッド的な描写がもう少しあるとより良かった感じはするけども
あとはジャッカルの悪魔がもう少し鮮明に映し出されていたら嬉しかった
原作があまりハマらなかった自分にも十分楽しめた作品だったので食わず嫌いせず幅広く観られて欲しい一作