赤い車の連れていった未来。
BSSTOで、久しぶりにこれはダメだという映像に出会ってしまいました。
本映像は、結婚記念日に様々な準備をして帰宅した夫が、自宅に妻以外に誰かがいることに気付き、自棄になってしまって……という内容だったのですが、展開としても物足りなければ、最後も説明不足でしかなくて、作品として成立していない内容でした。
妻と夫、それぞれの様子がカットバックとして挿し込まれていって、観客をスリリングに煽ろうとしていましたが、ところどころ上手くいっている部分はあれど、全体的に見ればうーんと唸らざるを得ない出来でした。
終始妻の行動にも夫の行動にも苛立ちが募り、最後は最後で嘘か本当かも分からない、真相は藪の中的な着地になってしまっていて、結局何を描きたかったんだろうと、嫌な課題を押し付けられて終わった印象でした。(私としても恐らく妻は本当のことを言っていると思ったのですが、どちらにも取れてしまうため、これはどう捉えるべきだろうと悩む時間がありました)
これがもし人の話をよく聞こうといったテーマ性であれば、本当にストーリーテリングが破綻していますし、もっとやりようはあったと思います。
少しだけ良かった点を挙げるとすれば、撮影、カメラワークは観られるレベルのものではありました。
特に、妻が人を呼び込んでいたことに気付いて、夫が走り出した際の顔面どアップシークエンスや、そんな夫を追う妻の『2001年宇宙の旅』的に画面が回転するシークエンスは、それぞれの心境をよく表していて、「映像はいい!」と1人で叫んでいました。
また、最後の車のシーンは『ユージュアル・サスペクツ』味を感じられて、視覚的にとても格好良かったです。
総じて、画的には良い点もあれど、全体を通して観ると映像集止まりなものでした!