アー君

箱男のアー君のレビュー・感想・評価

箱男(2024年製作の映画)
3.1
文芸作品の映像化において安部公房は成功している部類ではないかと思われる。それとは対象的に三島由紀夫の映画は、装飾過多の文体が映像にするのは難しいからなのか、自意識の描き方に汎用な印象を見受ける。(ポール・シュレイダー「Mishima」は例外)

代表作の「砂の女」「他人の顔」等は勅使河原宏との相性が良かったこともあるが、取扱説明書のような分かりやすい文体が、勅使河原によって視覚効果が適度にデコレートされた皮肉な結果でもあろう。

【↓以下ネタバレがございます↓】

原題である小説はだいぶ昔に読んだぐらいで、あらすじも殆ど覚えていなかったので、新たな物語として鑑賞となったが、過去に資金面で製作が頓挫していたためなのか、やや走り気味の印象もあった。(実際に箱男も走っていたが。)

SNSにおける匿名の二面性を箱男を介した現代社会の暗喩として時代を先取りした描き方が、作者が先見の明を持っているかのような評価に一定の理解は示すが、箱男と偽箱男との無為な争いを傍観している観客自身も主観による箱男から見える視点と同様であたかも「偽々(ニセニセ)箱男」のような解釈には少し無理を感じた。

箱男の世界観は自閉的かつ窃視症気味のフェティシズムの症状に近く、本人の同意なしに盗み見することが特徴で、他者のプライバシーを侵害しており、倫理的にも法的にも問題ではあるが、映画を鑑賞する行為自体を出歯亀と結びつけるのは短絡的ではないかと思うが。

そして昭和仮面ライダーのような悪役メイキャップが目立ったが、中盤からなくなったのは何故なのだろうか。

パンフレットはスタッフの氏名が直筆によるデザインをされていたが、現在ではpsdの拡張子で調整をしていたが、psd自体が存在していなかった時代は二階長化にしてTIF形式で保存していたのを思い出す。

[イオンシネマ板橋 8:30〜]
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