脳内金魚

ザ・タワーの脳内金魚のネタバレレビュー・内容・結末

ザ・タワー(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

確かにソリッドシチュエーション「ホラー」と言えなくもないが、メインはフランスにおける人種差別や移民、貧困の暗喩なんだと思う。

以前見た『ガガーリン』でもフランスの団地がテーマになっていたが、フランスではこういった低家賃のアパート群が低所得の移民たち(アフリカ系やアラブ系)の受け皿になっているそうだ。実際、この作品の中でも、白人系、アフリカ系、アラブ系を中心にグループが形成され、対立構造が生まれる。いつ外の世界に出られるか分からないなか、協力でするのではなく、如何に相手を出し抜き限られたリソースを奪うか、このひりついた空気感が今のフランス社会を如実に表しているのだろうなと思った。
劇中では、外に食料を調達に行けないため、ペットが食料になるのだが、その際「犬を食べるやつもいる。うるさい牛と思え」的な発言がある。『ヴィーガンズ・ハム』でも中国のこの犬食文化を揶揄するシーンが出てくるのだが、如何に欧米圏でアジア人の地位が低いかが分かる。この辺りの欧米(まぁこの場合フランスだが)の他の文化への傲慢さは、問題提起として描いているのか、面白いと思って描いているのか判断に迷うところだ。と言うか、十中八九悪いと思っていないだろう。フランス映画、ハリウッドにはないウィットや面白さはあるが、このあたりの傲慢さは、こいつらシャルリー・エブド事件から何も学んでないなと毎度思う。

閑話休題

映画自体はソリッドシチュエーションと(恐らく)社会問題を融合させたとても面白そうな題材なのに、着地点を決めていなかったのか、なんとも腑に落ちない消化不良な結末となってしまい残念。勢力図を塗り替えるため、地道に産めや増やせやはなかなか面白かった。現実世界も取り敢えずはそうだものね。設定も食料はともかく、水や電気、排泄物の処理などはどうなっているのかなどつっこみどころは満載だが、『ミスト』みたいに「こういう世界線」と思って納得するしかない。

惜しかったね!

〈追記〉
わたしは単純に人口増やしてたんだと思ってたけど、食料だったの?
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