ボギーパパ

フィリップのボギーパパのレビュー・感想・評価

フィリップ(2022年製作の映画)
3.8
劇場2024-75 DENKIKAN

熊本ではなかなか掛からないなぁと思っていたら1週間限定上映!DENKIKANさんありがとう!

ポーランド🇵🇱作品
なんですか、原作小説が発禁処分になっており、以来60年経っての映画化との事。

ワルシャワに住んでいたフィリップは、恋人や家族をナチスに殺され、その後フランクフルトで自らをフランス人だと偽り高級ホテルでウェイターをしつつ、ドイツ人将校の妻らと関係を持ち、小さい復讐をしていたが、美しいドイツ人リザと知り合い心を動かされる、、、と言ったところ。

「小さな」と書いたが、基本復讐劇であることは間違いなく、主人公フィリップの心の葛藤が、抑圧的演技で、またラスト近くのある出来事では開放的に描かれている。これは主演のエリック・クルム・ジュニアの力量
また、リザを演じるカロリーネ・ハルティエのキュートさと、恋の衝動に突き動かされる様は、昭和の日本映画的でもあり、やや臭いが目力もあり素敵。

そしてナチスを扱った映画であるため、ここは如何にナチスの加害性、暴力性、盲信性を描くかが鍵であろうと思っていたが、凄い演出であった。全編通じてハーケンクロイツが染め上げられた幟なのか旗なのか、懸垂幕なのかがハタハタと風に舞う様は、ナチス親衛隊らの非人道性を声高に歌い上げているようで、その行動を描くのにターボをかける役割を十二分に果たしている。ここまで徹底すると凄い!
そして本作の軸にもなっているのはナチスの政策であるアーリア人純血主義。まぁ胸クソ悪いというか、人類史上最悪の政策。
ヒトラーにとって理想的なアーリア人とは、金髪で目は青く背が高いことだそうな。
この政府の思想はポスター、ラジオ、映画、教室、新聞で公に表示され、劣性人種の繁殖を制限。それで人類を改善できるって信じていたっていうのが、今今の多様性重視の時代からしてみると信じられな政策!これが本作は端々にも織り込まれており、まぁ気分悪い!そんな中ちょいちょい軍部にありがちな男色描写もあったりと、、、ああ胸糞!

とはいえフィリップとリザの愛の姿は官能的で美しかったし、フィリップとピエールの友情と悔恨の描写も素晴らしかった。

ただ最後はどうなったのか、こちらに預けられた形は、、、あと、劇伴というほぼ常に音楽がのっていたのには疑問を、、、
ちょっと煩いかな、、、でも佳作!(^^)
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