半兵衛

死の谷の半兵衛のレビュー・感想・評価

死の谷(1949年製作の映画)
4.0
ラストは甘すぎるかもしれないけれど、主人公が裏社会などのしがらみから逃れようとしても逃げられない象徴のようにそびえ立つデスバレー(死の谷)や誰も信用できない非情な悪党たちといった厳しい描写がドラマ全体を引き締めているので適度な緊張感があるしこの締め方も神話のようでありかなと思えてくる。

ジョエル・マクリーの元ネタである『ハイ・シエラ』のボギーとは違う冷徹で二手三手先を読む悪党ぶりがかっこいい、そんな彼にベタぼれして最後まで付き従おうとするあばずれでありながら実は純真で一途なヴァージニア・メイヨもいい。ピンチに陥ったマクリーを助けるためメイヨがとった命がけの行為は主人公ならずともきっと胸を打たれるはず。

サイレントから活躍するベテランのウォルシュ監督は高低差を生かしたアクションや列車と馬を並走させるダイナミックな構図(馬に乗っていた人が列車に飛び乗る動作をワンカットでおさめているのに驚かされる)といった躍動感に満ちた演出で西部劇を大いに盛り上げる、なかでも列車強盗での列車の屋根にいる主人公とその下にいる保安官や車掌による二点の行動を交互に撮ってサスペンスを煽る演出が素晴らしく強盗が上手くいくかと思いきや更なるドラマの罠を仕掛けてまたハラハラさせる演出も憎い。

神父や主人公が車掌の情報を聞きに来た彼の奥さんなどユーモアのあるやり取りも印象的で、ドラマにメリハリを与えている。

マクリーが惚れる一般人女性のドロシー・マローンが原典よりも更に性悪になっている、でもドロシーは不穏そうな顔立ちといいこういう役のほうがハマっている。

ラストの絶壁である死の谷を役者によじ登らせ、落ちそうな足場で演技をやらせるのにびっくり。
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