リミナ

数分間のエールをのリミナのレビュー・感想・評価

数分間のエールを(2024年製作の映画)
3.8
ヨルシカ『雨とカプチーノ』MVや『可愛いだけじゃない式守さん』EDを手掛けた映像製作チームHurray!と100studioがタッグを組んだ初の劇場作品。

Blenderで制作された3DCGアニメーションは普段目にするアニメーションとは異なる質感でいて違和感がない。淡い色合いとリムライトのルックが独特。オバケやデフォルメ表現も使われるのが面白い。楽器演奏やキーボード操作で手元を省略せずに映していたのが良かった。

映像面は、MVを題材の一つにしていることもあってか、スマホで撮影したようなカメラワークやカットを繋ぐトランジションが特徴的。
また、絵面的には地味になりがちなPC操作の場面はイメージ映像にすることで、創作活動をしない観客にもやっていることが直感的に伝わる描写に。この辺りは監督が「映画大好きポンポさん」に影響を受けていることの表れに感じる。その他、実在のメーカーの楽器や制作ソフトを使用したり、制作中に実在の自然現象を調べながらそれを作品に反映させる過程の描写などリアリティにも拘りがあった。

物語面は、創作活動に関わっている人、挫折した人、志している人に刺さるような内容。挫折した大人と初期衝動に溢れる主人公、俯瞰した主人公の友人の3人をメインに68分という時間でコンパクトにまとめられていた。端から見た成功者側の苦悩を扱っていたのも印象に残った。

創作活動は決して楽しいことばかりではない、むしろ辛いことの方が多いかもしれない。それでも創作をして良かったと心から思える瞬間がある。創作する人達にエールを送ってくれる作品。
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