どらごんいん

旅芸人の記録のどらごんいんのレビュー・感想・評価

旅芸人の記録(1975年製作の映画)
4.0
1952年、
戦争の記憶が生々しく、軍事独裁政権の気配が忍びよる不穏な時代。
旅芸人の一座はギリシャを旅しながら、1939年からこれまでの日々を回想する。

彼らの旅は、あえて撮影当時(1970年代前半)の、
軍事独裁政権が継続する「現在」の風景の中に描き出されている。

焦点人物も、空間も、時間も、時代も、
長い長いワンカットの中で入れかわる、
その独特な文法で、「真実」をとらえようとしているようだ。

旅芸人には、神話の王族の名がつけられ、神話と同じ運命をたどる。
(夫アガメムノンを謀殺した妻クリュタイムネストラとその情夫アイギストスは、
長女エレクトラの導きで長男のオレステスに殺される。)
第2次大戦と内戦は、潜在的なギリシャ人のコンプレックスをさらした。
彼らはギリシャの風景そのものだ。

230分、私は何を見て、何を見なかったのか。
何年か後に観なおしたい。