浅野公喜

凶気の桜の浅野公喜のレビュー・感想・評価

凶気の桜(2002年製作の映画)
3.5
不良狩りをする愛国心強めな若者達を描いたヨウスケ・クボヅカ主演の青春バイオレンス。

自らを強い正しいと思っている若者がやがてヤクザや右翼といった巨大な力に飲み込まれていくのが大まかなストーリー。最終的に一人でそれらに立ち向かっていく様は東映製作に加え頻繁に登場する桜や日本家屋も相俟って昭和の任侠映画風、しかし舞台はストリートカルチャーの最先端的存在の渋谷なのでその組み合わせが斬新なんですが、メインの3人同士も常に喧嘩腰だったりヒロイン含め繋がりがドライで感情移入の余地があまり無く、終盤も呆気ない為に盛り上がりに欠けた印象が。

意外と駅の売店のおばちゃんや書店の爺3とも交流したりと人情物的要素も少し有るので、多少クサくても「プライドや大切なものを砕かれ壊され怒りと悲しみのあまり無謀にも強いものに立ち向かう」的流れをより濃く描いてくれたら儚さの象徴でもある桜の美しい映像と相乗効果を生み出せた気がしなくもないです。

やや一本調子ながら眼光鋭いヨウスケ・クボヅカの演技はエネルギッシュ、細かいカット割りや画面分割凝ったアングルやカメラワークに加え冒頭の落書き東映に飛び降りで仮面ライダー化等映像や演出はスタイリッシュ且つユーモラス、Kダブシャインやキングギドラといったヒップホップの曲もいかにもな感じで〇。

上京した頃まだギリギリ営業しその夏閉店した旧渋谷HMV、ビラだらけの電話ボックス、Tシャツ重ね着、男女共に髪染めてる率の高さにコギャル、NHKの番組について話す際の「プロジェクトX」「その時歴史が動いた」等2000年代の雰囲気が凄く懐かしかったです。
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