Kaorin

パレードのKaorinのネタバレレビュー・内容・結末

パレード(2024年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

いろんな感情が溢れすぎて感想がまとまりません。
最初の震災のシーンがちょっと苦しくて、人によっては見続けるのを躊躇してしまうかもですが、最後に向かって愛に溢れた展開になっていきます。希望と光に満ちたラストを見届けられてよかった。

ロケ地の遊園地もいいんです。柔らかい光に包まれた死者のシェアハウス。リビングダイニングは屋外でキッチンはバーカウンター。ちょっと住みたくなります。私の好きな某バーにそっくり。

音楽は野田洋次郎さんが一年かけて作った完全オリジナル35曲とのこと。それだけでこの映画の芳醇さが伝わります。

このあたりから、ほぼネタバレします。

リリーフランキーさん演じるマイケル(故河村プロデューサーと思います🥹)の映画愛に溢れた人物像がとってもよかった。舘ひろしさんから、映画バカと言われて「これしかできないからさ」と答えるとこ、たまらなかったです。彼の映画愛に溢れた少年みたいな無邪気さを、しょうがないなあと言いながら目を細めて見つめる監督の愛に溢れたまなざしを感じます。
マイケルを見ているだけで映画っていいな、人生っていいなと思います。
NG大賞のマイケルは必見😂

坂口健太郎さん、映画ライターのSYOさんを思わせる佇まい。この映画の優しさを支えてるのが坂口さんだと思う。また、本だらけの部屋がまたすごい。この作品、とにかく美術がすごいです。

何より長澤まさみさんが、まあきれいで。こんなにきれいな人だったかな、と。特に美奈子の微笑みに見惚れてしまいました。生き残った子供 リョウとのシーンも涙なしには見られなかった。リョウとなんで会話できるの?と思ったのですが、リョウはあの時、高熱で生死の境をさまよってたのだな、と。ナナもそうだったけど、そういう人もあちら側に行く狭間の世界に入ってしまうのだな、と解釈。完全に死んでないことも周りにはわかる仕組みはもう一回見ないとわからないけど、そこに希みを感じた。美奈子はストーリーテーラーになるのかな?と思ったら導入だけで。仲間の1人として思い残しを叶えて。
最後の海岸のシーンもよかった。

寺島しのぶさんもなんていい女優さんなんだろう。寺島さんの「長いこと一緒に生活できた」というセリフに涙腺崩壊。これは私自身の人生に重なったからかもしれない。子供が産まれ、生と死の交代劇のような。気持ちが済んだのかな。

そして森七菜さん。過去と未来、死者と生者をつなぐ、すごく大事な役割。彼女がマイケルの遺志を継ぐ奇跡。この展開がとても良かった。
 
エピソードとして一番グッときたのは横浜流星さんのパートでしょうか。深川麻衣さんの切ない演技にもらい泣きしてしまいましたが、2人の目があった?と思わせるシーンの流星さんの目の演技に特に心持っていかれます。ほぼ目の表情の変化だけなのですが、水間ロンさんの存在を知った驚きから、愛しさと諦めと決意へ…一瞬で変わりゆく感情の変化が素晴らしかったです。流星さんは、もともと目の演技が素晴らしいけど、表情から持っていくお芝居も多いのですが、今回はとても静かに。導演も素晴らしいと思いました。この時の音楽も絶妙で。もう一度見なくては。

冒頭のイメージとは全く違った光に向かうラスト、映画館にはまさかの綾野剛さん、完全にモブ。ラスト、え、河村さん?と見間違うそっくりの方がいて、河村さんの名作「マザー」で長澤さんの息子を演じた奥平くんが再び息子のリョウ、その向こうに綾野剛さん。なんて贅沢な並び。

最後のエンドロール、俳優さんの名前が1人ずつゆっくりと。応援スタッフの名前までしっかり読み取れるスピードで、きっとみんな河村さんへの愛を持った方々なのだろうな、とグッときました。

もうすぐ父の命日。父の好きだった映画「カサブランカ」のワンシーンが何度も映っていて。父は思い残しがあったのかなぁ。でもきっと優しい世界にいるよね?
残された私に寄り添ってくれる尊い映画。
大切にまた見返したいと思います。
Kaorin

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