1977年の『One Way Boogie Woogie』から27年を経て、ジェームズ・ベニングは同じミルウォーキーの36地点を再訪し、同じアングル・同じ構図で再び撮影した。「リメイク」というよりも「タイムマシン」のような映画。 この映画は単に「街の変化」を見ることではない。そこにはベニング自身の人生が刻まれている。彼が若き日に切り取った風景を、老境に差しかかった彼がもう一度撮り直すという行為。それは監督個人の時間の経過と、都市の歴史の時間とが交差する瞬間である。観客は風景を通して、時間が私たちすべてに平等に作用することを痛感する。
ベニングの生まれ故郷であるミルウォーキーの景色をワンショット1分60カットで捉えた『One Way Boogie Woogie』(1977年)と、27年後に同じ場所、同じエキストラを起用して撮影されたセルフリメイク作を組み合わせた記録映画。微少な差異から跡形のない変化まで、安易なノスタルジーに絡め取られない対象との距離感を保持しつつ観測される風景は、妙な詩情を纏っている。『RR』同様、フレーミングの適切さに唸った。それだけでずっと観ていられる。