障がいある弟と双子の兄の短編ドキュメンタリー。思春期を迎え、仲良し兄弟の関係が微妙に変わっていく。その変化を視線と沈黙でうまく切り取っている短編。どちらの気持ちもわかって切なかった。
いつも一緒の弟に障がいがあるとは思ってはいなかった。ただ風変わりなだけだと。弟は自立できるだろう、ずっと面倒をみていきたいと、兄。
いつまでも一緒にはいられない、と悟るように話す弟。でも将来も一緒に暮らしたいと兄に伝えた時の兄の微妙な間合い。
二人は気づいている。今の時間がどんなに大切な時間なのか。双子の阿吽。言葉にしなくても互いに何を考えているのかがわかる。だから切ない。
弟の思慮深い表情、感情を抑制している兄。
スケボーを仲間と楽しむ兄。
それを見ている弟、兄が弟の方に遠くから視線を送る。やましい気持ち、後ろ髪を引かれつつ、遊び仲間をといる兄。
この作品も障がいある当事者のみでなく、ヤングケアラーである「きょうだい児」の兄の気持ちにも焦点を当てている秀作。
障がいある兄弟姉妹を描くとき、その周りの兄弟姉妹の心が置き去りにされている現状が十分に描かれない。
「ワンダー 君は太陽」でも書いたけれど、美談として障がいある者を中心に支援する家族を描くが、その反面、幼い頃から、弱者をサポートする役回りが身につき、自分を押し殺す「きょうだい児」は太陽の周りをまわる惑星にしかならない。きょうだい児もまた、自分の人生を歩む太陽であるはずなのに。自分の人生を生きられないまま大人になっていく現状。
今年は「きょうだい児」「ヤングケアラー」をテーマの一つにしています。
先日も「きょうだい児」についての自主制作映画を観てきましたが、まだfilmarksには出ていなくて、配信予定あるとのことなので、またレビュー書きます。
多くの方に「きょうだい児」のことを知ってもらいたいです。